海のアクティビティ

海の中の小さなアイドル ピグミーシーホース

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小笠原にスクーバダイビングを目的に来たゲストのリクエストに多いのは、イルカやシロワニ、またダイバーの夢でもあるジンベイザメやクジラとの遭遇などです。
しかし、なかには小さな魚をリクエストされるダイバーもいます。

その中でも人気がある生き物の1つが、ピグミーシーホースという魚です。
ピグミーシーホースは、タツノオトシゴの仲間です。
みなさんもタツノオトシゴはご存知だと思いますが、タツノオトシゴは全長7~8センチほどで、中には大きいものでは20センチほどになるオオウミウマというものもいます。

しかし、ピグミーシーホースは成長しても、大きさは親指のツメほどといったほんとうに小さな魚です。

英語でタツノオトシゴはシーホースやシードラゴンなどと呼ばれます。
ピグミーシーホースは、その名の通り、ピグミー(最も小さな)シーホース(海馬)
ということで、めっちゃ小さいタツノオトシゴ、ということになります。
ピグミーシーホースは世界中では9種類が確認されているようですが、日本では4種類、そのうち小笠原では2種類が見られます。

日本で最初に発見されたのが、この赤いピグミーシーホースです。
まだ、和名は付いていませんが、今から約20年前に、日本で最初に小笠原の海から見つかりました。

ピグミーシーホース01

赤いウミウチワに擬態する赤いピグミーシーホース

このピグミーシーホースは、黄色や赤色のウミウチワというソフトコーラル(柔らかいサンゴの仲間)に住んでいます。
ピグミーシーホースが不思議なところは、ただ小さいだけではありません。
体の色をウミウチワの色に合わせて隠れているのですが、さらに体の模様やコブが、そのウミウチワのポリプにそっくりに同化しているので、ぱっと見では、全くわかりません。(擬態といいます)
先程、親指のツメほどと書きましたが、小指のツメよりも小さいものもいて、見つけるのも一苦労です。

ピグミーシーホース02

黄色いピグミーシーホース

初めて見る人は、ガイドに指さされても、なかなか分かりづらいかもしれませんが、見つける(認識する)コツは目の部分と、絡みついてる尾の部分に注目することでしょうか、よく見ると呼吸をするエラが動いているのもわかるかもしれません(最後にある動画で注意して見てくださいね。)
また、肉眼では発見できても、写真を撮るときに、カメラのモニターに入れようとするのも大変です。

ちなみに、上の写真には2匹のピグミーシーホースが写っていますが分かりますか?
正面を向いてるピグミーシーホースの下に背を向けているもう1匹がいます。

もう1種類は日本だけに生息していて、発見以来、ジャパニーズ・ピグミーシーホースと呼ばれていた種類です。

ダイバーの間では、通称ジャパピグと呼ばれていましたが、2018年にハチジョウタツという和名がつきました(ハチジョウは八丈島のことです)。

こちらは、最初に紹介したものよりも小さくて体も薄く、大きくても人差し指のツメくらいです。色は赤いものや茶色いものなど様々ですが、体に亀の甲羅のような模様があるのが特徴です。

ハチジョウタツ

ハチジョウタツは様々な色の個体がいて、鮮やかなものも多い

このハチジョウタツは、最初に紹介したピグミーシーホースのように、決まったウミウチワではなく、海底の岩の表面などに生えてる海藻などに隠れて住んでいます。
その姿は、まるで小さな海藻の切れ端がフラフラしているかのようです。

そのため、見つけるのは至難の業、そして、一度見つけたからといって、次に同じ場所に行ってもまた出会えるとは限らないレアな魚です。

タツノオトシゴの仲間はメスがオスのお腹の中に卵を生み、卵はオスのお腹(育児嚢という袋)のなかで孵化して、海へと旅立ちます。(人間の世界で言うところの育メンですね)
つまり、オスのお腹から赤ちゃんタツノオトシゴが生まれて海へと旅立って行くのです。
ピグミーシーホースの場合も同じでしょうから、指のツメの大きさほどのお父さんピグミーシーホースから、さらに小さなピグミーの赤ちゃんが生まれてくるのです。
その大きさは、2ミリ?1ミリ?もっと小さいのでしょうか?
想像するだけで面白いと思いませんか?
いつかは、この目でピグミーシーホースの出産シーンを見てみたいものです。

ピグミーシーホース04

育活中!お腹がパンパンに大きくなったオスのピグミーシーホース

小笠原の海は魅力がいっぱい

 

大はクジラから小はピグミーシーホースまで出会うことができる小笠原の海!
毎日潜っていても、どんな生き物に出会えるかワクワクはつきません。

みなさんも、世界一小さなタツノオトシゴ、ピグミーシーホースに会いに来てみませんか?

南俊夫

写真家・ガイド

南 俊夫

22歳の時に初めて小笠原を訪れる。大学卒業後、設計会社に勤めるが27歳で父島に移住。以来、20年のダイビングガイドをしながら小笠原の自然を撮影し続ける。2011年からはアホウドリの保全活動にも従事しする。
作品は国内外の広告、出版物で使われ、2015年にはアメリカのネイチャーズベストマガジンの表紙を飾った。
著書
「イルカ海に暮らす哺乳類」あかね書房 
「僕はアホウドリの親になる」偕成社
受賞歴
2000年
ナショナルジオグラフィックフォトコンテスト入賞
2008年
米、ネイチャーズベストマガジンフォトコンテストOcean部門入賞
2011年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト2nd Place
2015年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト11nd Place

写真展
2012年6月
「コニカミノルタ環境企画展OGASAWARA未来へつなぐ自然展」 新宿コニカミノルタギャラリー
2013年11月
「海のシェルパ展 AQUANOTE」四人展 新宿ヨドバシカメラギャラリーINSTANCE
2015年10月
「小笠原の今を知る 南俊夫写真展」葛西臨海水族園
2018年10月「アホウドリ復活への挑戦 ~小笠原で行われたこと」品川キヤノンギャラリー
作品は下記ウェブサイトで見ることができる。

http://toshiominami.com/