ダイバーや釣り人のクチコミで少しずつ広がり、テレビ放送で紹介されたことにより
一気にその知名度を上げたサンダル・ギョサン。
初めて小笠原を訪れた方がびっくりするほど、島内普及率の高いサンダルです。
『便所サンダル』風のこのゴムゾウリがこんなにも小笠原の人々に愛されるようになった理由を紐解いていくと、この島が日本に返還されてからの人々の暮らしや文化が見えてきました。
今回は、小笠原返還とともに歩んできたギョサンの魅力をたっぷりご紹介します。
『ギョサン』という名前の由来
ギョサンはゴム素材で作られています。
そして、靴底(サンダル裏)は長靴のようにギザギザしたデザインになっています。

なので、グリップがよく効いて、濡れているところでも滑りません。
一般的なビーチサンダルって、例えば濡れたままコンビニに入ったときなどに『ズルっ!』『おぉっとー!』ってなったりしますよね(笑)
ギョサンにはそれがありません。
そもそも、『ギョサン』という名前の由来は『漁業従事者用サンダル』
船の濡れたデッキや、磯・岩場でも滑らないことから、漁業従事者・すなわち漁師さんたちに愛用されていたサンダルなのです。
漁業従事者用サンダル、略してギョサン!
一体成型で丈夫な作り
ギョサンは一体成型と呼ばれる作り方で、ソール(サンダル底)と鼻緒が一体になっています。

普通のビーチサンダルは、サンダル底に鼻緒をはめ込んだ作りになっていますよね。

なので、走ったりふんばったりしたときに、
鼻緒がスポンって抜けちゃったりするんですよね…
抜けた鼻緒を穴に差し込めばもとには戻るけれど、またすぐに抜けてしまって、
ワンシーズンで買い替えることになったりしませんか?
一体成型のギョサンはここが違います!
ソールと鼻緒が一体になっているので、鼻緒が抜けるなんてことがありません!
壊れるときはたいてい、鼻緒が抜けるのではなく『鼻緒が切れる』
丈夫な作りなので、私の個人的感覚と周囲からの情報によると、3年くらいはもちます。
先日、ほぼ毎日ギョサンで過ごしているハードユーザーの島民男子が
『やべー!ギョサンが壊れたー!』と、壊れたギョサンを片手に裸足でやってきました。

『いつから履いてたの?』と尋ねると、
『えっとねー・・・3年前かな・・・』
十分ですね(笑)
信頼のおける国産品
冒頭でゴム製と表現しましたが、原材料はペレット状になった『合成樹脂』です。
その樹脂を高温で溶かし、金型と呼ばれる金属製の型に射出して形作られ、
職人さんの手作業によって一足ずつ整えられます。
技術の高い日本人の職人さんによって、
ひとつひとつ手がけられている国産品なのです!
安心と信頼のメイド・イン・ジャパン!
毎日履いても3年もつ、そのクオリティに納得ですね。
1,000円以下のお手軽価格

サイズによって値段に若干の差がありますが、700~800円前後で購入することができます。1,000円以下で3年は履き続けることのできる、国産のサンダル。
これ以上にコストパフォーマンスの高いサンダルが他にあるでしょうか?
ギョサンの歴史
ギョサン発祥の地は小笠原だった!
ここ数年で急速に注目を浴びるようになってきたギョサン。
実はギョサン発祥の地はここ、小笠原なのです!
日本の最果て・小笠原から、どうして全国へと広がる人気サンダルとなっていったのか、その歴史を見てみましょう。
小笠原諸島返還直後から、漁師の必需品
第2次世界後にアメリカの統治下とされていた小笠原諸島は、1968年(昭和43年)に日本に返還されました。
これにより、戦前に住んでいた方々が続々と帰島を果たします。
返還3年後の5月に小笠原諸島・父島へ帰島した漁師さん曰く
『漁師仲間がみんな履いていたから、自分も小笠原へ帰った2日後には買ったよ。』
とのこと。
『なにより、磯で滑らないのがいい。
それまでのサンダルは、岩場のノロで滑って危ないでしょ。
それに、僕ら漁師は船の上で年中水をかぶる。
小笠原は暖かいから、すぐに乾くギョサンは本当に重宝したよ。』
ギョサンの実用性が島民に広がる
そして、返還後の島の復興に従事していた建設業の人たちも、休みの日にはギョサンを履いて釣りや磯歩きに出かけるようになります。
また、当時の道路はまだ舗装されていません。
街中のメインストリートはサンゴダスト(海岸砂)で、それ以外の道は赤土に覆われていました。
雨上がりの水たまりやぬかるみを歩いても鼻緒が抜けることなく、丸洗いできてすぐに乾くギョサンはとても重宝したのです。
『通りを歩いて新築の都営住宅に帰ると、誰もが外の流し場で手足を洗い、潮や赤土を落としてから階段を上がっていったものだよ。』
(先の漁師さん談)
こうして、返還直後から漁師の間ですでに必需品となっていたサンダルは、1970年代後半から80年代にかけて、漁師以外の島民にも広がっていきます。
島民の日用品から土産物へ
1990年代に入ると、それまで茶色一色だったギョサンにカラーバリエーションが加わります。
光沢のある青やモスグリーンなどの新色が加わり、購入の選択肢が広がりました。
90年代半ばには『ギョサン』という呼び名が島内でも定着し、その実用性がダイバーなどの観光リピーターにも認知されて、マニアックな小笠原アイテムとなっていきます。
ギョサンのカラフル化
そして90年代後半、少しずつカラーバリエーションの増えつつあったギョサンに革命が起こります。
そのきっかけとなったのが、母島漁協が特注入荷した『白ギョサン』
『実用的であるとはいえカッコ悪い。』とギョサンを敬遠していた女性たちに大ヒット!
鼻緒が少し細めなデザインにもオシャレ感が漂い、『母島土産は白ギョサン』が、父島ではちょっとしたブームになります。

写真は最近の白ギョサンです
母島へ旅行に出かける輩がいると聞きつけると、『白ギョサン買ってきて!』とのオーダーが飛び交いました(笑)
これを経て、父島の商店でも赤や黄色などのギョサンが特注販売されるようになります。
こうしてカラーバリエーションの増えたギョサンは観光客にも人気を呼び、島民の生活用品であったギョサンが【小笠原土産】へと成長していきます。
テレビ放送で一気に有名に
小笠原観光客の密かな人気商品だったギョサンを全国的に有名にしたのが、テレビ番組『アド街ック天国・小笠原編』(テレビ東京・2000年6月放送)でした。
多くの島民が愛用しているその名も『ギョサン』と呼ばれるサンダルが、おもしろおかしく紹介されたのです。
これがきっかけとなり、小笠原経験のあるダイビング関係者を中心に沖縄・奄美・伊豆周辺にも広がって、メーカーに直接注文が入るようになります。
製造メーカーでの商品名は『一体成型サンダル・カリプソタイプ』であり、『小笠原のギョサンが欲しい』という問い合わせを受けて、初めて『ギョサン』という言葉を知ったそうです(笑)
ギョサンの種類
それでは、島内で販売されているギョサンをご紹介します。
元祖ギョサン(!?)カリプソタイプ

『一体成型鼻緒一本型』と表現されますが、島では一般的に『パールのメンズギョサン』、マニアの間ではメーカーの商品名通り『カリプソ』と呼ばれています。
鼻緒が細いレディースギョサン

こちらはラメ入りクリアカラーやメタルカラーなど、カラーバリエーションも豊富です。

子供用・キッズギョサン

動きの激しい子供が走ったりしても脱げにくいように、親指がホールドされるデザインになっています。
母島限定・通称ハハギョ

父島で主に販売されている【Pearl】印とは違うメーカーの【VIC】印。
鼻緒が細めなデザインが特徴で、『【Pearl】では鼻緒で足の甲がギョサン擦れして痛い』という方にはこちらがおススメです。
こちらはカラーバリエーションが少ないのですが、今年の夏に『ハハギョ・母島限定ボニンブルーカラー』が発売されて話題になっています。

『ボニンブルー』というのは小笠原の海の深い青色を表現した言葉で、島の英語名・ボニンアイランド(Bonin Island)からそう呼ばれています。
手に入れたい方はぜひ、母島へ遊びに行ってくださいね♪**
まとめ
小笠原諸島が第2次世界大戦後にアメリカの統治下となり、1968年に日本に返還されてから、人々の暮らしに寄り添ってきた『漁業従事者用サンダル』ギョサン。
濡れた船や磯でも滑らず丈夫であることから漁師の必需品だったギョサンは、未舗装道路の水たまりでドロドロになっても丸洗いできてすぐ乾くことから島民に広がり、やがて観光客の間でも人気となって色やデザインも豊富になり、いまではネットショップでの取り扱いも多くなりました。
でも!
デザインや色によって、その履き心地が変わってきます。
ぜひ、ギョサン発祥の地・小笠原を訪れ、島の人々の暮らしぶりを観察しながら歴史に想いを馳せつつ、店頭で実物を手に取って、あなたの好みと気持ちと足にピッタリくるギョサンを選んでいただきたいと思います。
ギョサンを吟味するための小笠原旅行、おもしろいと思いますよ!(笑)

Mermaid Cafe オーナー
あらいたかみ
小笠原の海に魅せられて、1998年より小笠原に移住。
ダイビングインストラクターとしての仕事を引退した後、少女の頃の夢『手作りケーキとおいしいコーヒーの店』を移動販売車で始める。
Instagram:mermaid__cafe
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