特別展「写真展 昔の小笠原」開催中
昔の小笠原を知ることができる歴史写真展は、小笠原ビジターセンター特別展の中でも人気のある展示です。
数年に一度は開催しているのですが、実は毎回テーマを少し変えてご紹介しています。
今回のテーマは「変わりゆく風景や建物、人々の暮らし」です。来島される方はもちろん、島に住む私たちにとっても新鮮な発見のある展示を目指しています。
初めて写真に収められた小笠原
明治8(1875)年、小笠原開拓を決断した明治政府が「明治丸」で小花作助をはじめとする調査団を派遣、乗組員の一人である松崎晋二が撮影した写真がそれにあたります。
今回展示している写真を含め25点が国立公文書館デジタルアーカイブでも公開されています。
*本展示ではより見やすくするための画像処理を加え、プリントしたものを展示しています。
はて?ここはどこでしょう?
明治8(1875)年の風景のコーナーでは、題名のないモノトーン写真の隣にオレンジ色の扉が用意してあります。
めくってみると…
全く同じ構図とはいきませんが現在の風景を見ることができます。
変わらない点も変わった点も一目瞭然ですね。
また、カラー写真を添えることで、白黒写真の中に当時の人々が見たであろう「小笠原の色」を感じることもできそうです。
当時のカメラは露出時間が長く動くものの輪郭は捉えられないため、海が波のない湖のように写っています。また、人物もやや硬いポーズや表情の写真が多くノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
戦前に見られる産業の発展と豊かな生活
第一次世界大戦後、日本の統治下にあった南洋群島と本土との中継地点にあたる小笠原の人口は増加し、漁業、農業共に最盛期を迎えました。
漁業では捕鯨事業の再開、マグロ・カツオ・サワラなどの本土への供給、農業ではサトウキビ栽培からカボチャ・トマト・ナス・スイカなど、本土で冬場に不足する野菜栽培が盛んに。
この時代の写真は風景以外にも、水産物や農作物と共に写る人々の写真や、集合写真などが残されています。
豊かな自然と温暖な亜熱帯気候を活かした産業が人々の暮らしにゆとりをもたらしましたが、昭和12(1937)年には島内の写真撮影は禁止され、集合写真などにも戦時色が濃くなります。
戦時中から米軍統治時代へ
昭和19(1944)年、南洋群島の戦いで勝利した米軍は6月には小笠原諸島の広範囲に空襲を行いました。大きな被害を受けて6,886人の島民が本土に強制疎開を余儀なくされ、島は日本軍により要塞化されます。
空襲後の父島の様子や現在は見られないたくさんの畑などが、米軍の撮影した航空写真に確認できます。
終戦後の昭和21(1946)年、米軍統治下の小笠原父島に欧米系島民129名が約2年半ぶりに帰島し、米軍の協力を得て生活の再建が始まりました。
助け合いながらの生活の後、やがて生活物資は月に1回グァムからの補給船により運ばれるようになり、農業や漁業で得たものを出荷した収入で食料や日用品を購入したそうです。
10年後には現在の「お祭り広場」付近に小中学校にあたるラドフォード提督初等学校が完成します。
そんな23年間の米軍統治時代を経て昭和43(1968)年6月28日、小笠原諸島は日本に返還されました。
米軍統治時代を過ごした欧米系島民、強制疎開で島を離れざるを得なかった戦前からの島民、戦後復興のために新たに島に来た人々それぞれの立場で様々な思いがあったことでしょう。
移り行く景色・自然との共生
日本への返還以降、小笠原諸島復興計画が決定しインフラ整備が進められる中、国立公園に指定されるなど自然環境にも注目が集まるようになります。
そして竹芝~父島間の定期船の就航により一般の人々が来島できるようになると、訪れた人々は亜熱帯特有の景観や米軍統治時代の面影に魅了されました。しかし、新しい施設、建物も増え、徐々にその景観は変化していきます。返還当初の建物が既にほとんどない現在、少し前の写真がとても懐かしいものとして映ります。
昭和63(1988)年、小笠原の自然・文化・歴史を紹介する施設として小笠原ビジターセンターが開館します。
また、同年は国内におけるエコツーリズムの先駆けとなった「ホエールウォッチング」が小笠原で始まった年でもあり、本展示ではここまでの時代を振り返っています。
特別コーナー 小笠原とハワイを結ぶゲレー家の人々
こちらは少し時代を遡り、小笠原の最初の入植者を語る際に登場するセーボレー家と同時代に入植されたゲレー家についての展示です。
この展示では19世紀の小笠原とハワイを行き来したゲレー家の人々とその生活に焦点を当てています。
おわりに
この展示エリアは著作権に係るものや個人のご協力による展示写真も多いため撮影禁止としています。こうした理由から、本記事でも個々の写真を大きくご紹介することは控えざるを得ないのですが会場の雰囲気は伝わりましたでしょうか。
これからも、今見られる小笠原の風景が少しずつ変化していってしまうのかもしれません。
あなたにとって変わらないでほしい小笠原の風景は何でしょう?またはどこでしょう?
簡単に大量の写真を残せる現代ですが、それゆえ大事な変化に気づいていないことがあるかもしれません。
写真撮影がまだ特別なことであった時代に思いを馳せ、1枚1枚の写真を是非じっくりと観に来てください!
小笠原ビジターセンター
開館日
おがさわら丸・観光船入港中
午前8時30分~午後5時00分まで
*夜間開館日あり
*開館日については下記サイトからご確認ください。
https://www.tokyo-park.or.jp/nature/ogasawara/
問合せ
小笠原ビジターセンター
電話番号:04998-2-3001
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