
春季特別展「ザトウクジラ展」~クジラと一緒にウォッチング~
ホエールウォッチングシーズン、小笠原ビジターセンターでは春季特別展「ザトウクジラ展」を開催しています。
例年春はクジラに関する展示をしているので、そろそろネタ切れなのでは?と思われるかもしれませんが、そんなことはありません!今年は~クジラと一緒にウォッチング~と題してザトウクジラに関する情報のほか、ウォッチングツアー中や往復のおがさわら丸からみられるかもしれないイルカ、海鳥についてもご紹介します。
ザトウクジラってどんなクジラ?
ザトウクジラは体長11~17m、体重30~40tにもなるヒゲクジラの仲間です。
海面から全身が飛び出すようなブリーチングをしてくれない限り、ザトウクジラの全体像をみることはできませんが、ビジターセンターではそれが叶います!頭の先は室外に、尻尾は天井まで使って貼り出されている等身大ザトウクジラのイラストで、ぜひその大きさを感じてみましょう。天井付近にみえる大きな鳥はアホウドリの実物大模型です。


ザトウクジラの最大の特徴は4mにもなる長い胸ビレです。胸ビレ、背ビレ、噴気(ブロウ)の高さは4m、そして生まれたばかりの仔クジラの全長も4m、ザトウクジラと「4」という数字は縁があるようです。

呼吸と噴気(ブロウ)について、よく「潮吹き」と呼んだりもしますが、噴気(ブロウ)は海水(潮水)ではありません。クジラの体内で温められた息が勢いよく吹き出されるときに外気に触れて白く見えるのです。私たちが寒いところで「ハァーッ」と息を吐くと白く見えるのと同じことなのですね。
クジラと一緒に“何を”ウォッチング?
さて、ここからは本展示のテーマであるホエールウォッチング中に出会うかもしれない海の生きものについてご紹介しましょう!
イルカといえば夏の海をイメージしますが、ミナミハンドウイルカやハシナガイルカは一年中、小笠原の島々周辺で元気に過ごしています。のんびり1日コースのツアーであればウェットスーツなどを着用してのドルフィンスイムも夢ではありません。また、ハシナガイルカの群れにウォッチングボートが囲まれることも。海水温は最も低い時期ですので船上からのウォッチングに徹し、背ビレの写真を狙って撮ってみるのもお勧めです。特徴ある背ビレから個体識別ができるかもしれません。


つづいて海鳥をご紹介しましょう。
クジラを探していると、海面スレスレや大空に海鳥が飛ぶ姿をみかけることがあります。いったいどんな海鳥が飛んでいるのでしょう?
小笠原ホエールウォッチング協会では、小笠原周辺海域での鯨類の分布を把握するため、小笠原水産センターの漁業調査指導船「興洋」による目視調査を行っていますが、その際に目撃された海鳥についても記録しています。
約20年間の記録によると、アホウドリ、クロアシアホウドリ、コアホウドリは繁殖期である11月から翌年5月~6月頃にかけて、カツオドリ、アカアシカツオドリは通年観察されていることがわかります。


特に注目してみてほしいのはアホウドリの仲間です。
小笠原は北半球に生息する3種のアホウドリ(アホウドリ、クロアシアホウドリ、コアホウドリ)のすべてが繁殖活動のためやってくる唯一の場所です。彼らの主な繁殖地は聟島列島ですが、クロアシアホウドリは父島属島の孫島、弟島、母島属島の姉島、妹島でも繁殖が確認されているため、目撃のチャンスが高いアホウドリです。
やっぱり大きいザトウクジラ!
ミナミハンドウイルカ―体長250cm、ハシナガイルカ―体長200cm、アホウドリ―翼開長210-230cm、
カツオドリ―翼開長130-150cm、オナガミズナギドリ―翼開長103-113cm…
ザトウクジラ―尾ビレの幅400cm
大海原では大きさの感覚がよくわからなくなってしまうのですが、こうしてほかの生きものと比べてみるとザトウクジラは尾ビレだけでも誰にも負けません。そんなことを感じることのできるパネルを用意しました。


個体識別調査ってなんだろう?
一見同じような体つきのザトウクジラですが、尾ビレのお腹側の黒白模様や縁のギザギザの形が一頭一頭異なります。そのため尾ビレ写真を記録、収集することで個体識別調査を行っています。
個体識別調査を継続することにより、そのクジラが小笠原海域にいつやって来たのか、他の海域も利用しているのか、何年ごとに出産しているのか、ザトウクジラは全体で何頭ぐらいいるのか、といった様々な生態を明らかにすることができます。生きものの生態を知ることはその保全や私たちが共生していくうえで大切なことです。

おわりに
毎年数千キロも移動し、繁殖、子育ての季節になると温暖な海域へとやって来て私たちを魅了するザトウクジラ。
どうして歌うの?どうしてジャンプするの?まだまだ分からないことばかりです。そして、ザトウクジラだけでなく、イルカや海鳥についても知りたいことは尽きません。いつかそんな謎が解ける日が来るよう、これからもずっと彼らが安心して過ごせる海を守っていきたいですね。
小笠原ビジターセンター

開館日
おがさわら丸・観光船入港中
午前8時30分~午後5時00分まで
*夜間開館日あり
*開館日については下記サイトからご確認ください。
https://www.tokyo-park.or.jp/nature/ogasawara/
問合せ
小笠原ビジターセンター
電話番号:04998-2-3001

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