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迫力のビジュアル、性格はマイルド。「シロワニ」との遭遇を目指す冬の旅

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静かなるダイナミズム「シロワニ」に会いたい

東京から南へ1,000km、船で24時間かけてたどり着く小笠原。冬の水平線を見渡せば、巨大なザトウクジラがブリーチングを繰り返し、水中にはその歌声(ソング)が重低音となって響き渡る。そしてその深淵には、ダイバーたちの憧れ、「シロワニ」が静かに君臨しています。

さて、「シロワニ」とは?

白いワニのことではありません。
名前に「ワニ」と付きますが、実はその正体は、れっきとした「サメ」の仲間です。かつて日本ではサメのことを「ワニ」と呼んでいた名残から、この不思議な名前がついたと言われています。

現在、シロワニは世界的に個体数が減り、絶滅危惧種(IUCNレッドリスト:CR「深刻な危機」)に指定されています。 そんな大変貴重なシロワニに出会える場所。それがここ、小笠原の海なのです。
その希少さもさることながら、人々を惹きつけてやまないのが、サメの恐ろしさを象徴するような外見です。

シロワニ(写真提供:小笠原ダイビングベース聲)

2メートルを超える巨体や、むき出しになった無数の鋭い歯は、まさに「サメ」そのもの。しかしながらその性格は驚くほど穏やかで、こちらから刺激をしない限り人を襲うことはまずありません。その見た目と気質の大きなギャップも、ダイバーたちを虜にする理由なのかもしれません。 

冬の小笠原は、まさに地球の鼓動が聞こえるダイナミックなステージ。今回は、その「シロワニ」の核心へと迫ります。さて、どこに行けばシロワニに出会えるのか? 観光局が検証をしてきました。

1. 桟橋パトロールから始まる、2026年の冒険

小笠原に降り立った最初の夜、ダイバーをはじめ多くの人が吸い寄せられる場所があります。それが父島の

「とびうお桟橋」です。

ふと桟橋の足元を覗き込むと、そこにはすでに「彼ら」の影があるかもしれません。
2026年現在、小笠原のSNSや目撃情報で最も熱い?のが桟橋パトロール。
この無料かつ自力で行ける「桟パト」を侮るなかれ。

ここではネムリブカ、マダラエイ、ヘラヤガラやフグなどたくさんの生物が観察できます。そして、夕暮れ時になると、2メートルを超える巨体のシロワニがゆらりと現れる。むき出しの鋭い歯、威圧感のあるシルエット。けれど、その動きは驚くほど優雅で性格も穏やか。まずは陸上から、冬の人気者シロワニに挨拶を済ませましょう。


2. ダイビングで出会える可能性は高い?!

シロワニを目の前で見られるアクティビティといえば、スキューバダイビングです。出会える可能性が高いのは12〜3月頃。シロワニが好んで集まることがわかっているダイビングポイントが島周りにいくつか存在します。

深度があるポイントまたは潜降ロープのないポイントになるため、中級以上のダイビングスキルがある方が楽しめます。条件さえ揃えば、高確率で会うことが出来る生物です。
そんな絶滅危惧種の「シロワニ」に出会える小笠原の海、すごいですよね。

湾内・沈船に集うコワモテたちの冬のランデブー

二見港の湾内最奥に位置する、「赤灯台」などと呼ばれるポイント周辺は、シロワニたちの聖地です。目の前には停泊中のおがさわら丸。足元にはスギノキミドリイシの見事なサンゴ群。

しかし、ダイバーの本命はそのサンゴの斜面を下ったさらに深く、水深約35mに眠る巨大な沈船にあります。沈船のふもとに辿り着くと、シロワニがゆったりとホバリングしている姿がよく目撃されます。多い時には10匹近くも集まっていることも…

シロワニは昼間は岩陰や穴の中に身をひそめて過ごす、臆病な性格だとも言われています。驚かせないようにそっとアプローチすれば、息をのむほどの距離で見つめ合えるかもしれません。そんな世界が、まさに目と鼻の先に存在します。

シロワニ(写真提供:小笠原ダイビングベース聲)

冬はシロワニの恋の季節?!

夏に姿を消し、なぜ彼らは冬になると集まるのか?
それは繁殖のためという説があります。
もしかしたらこの沈船は出会いの場でもあるのかもしれません。
シロワニは子宮内で卵が孵化し、赤ちゃんの状態で生まれてくる卵胎生(らんたいせい)の生物。時にはお腹の大きなメスの姿も見られます。

ちなみにそのお腹の中では、子宮内で先に孵化した稚魚が他の卵や自分より後に生まれた兄弟たちを食べる「共食い」を経て育つため、一度の出産で生まれるのは最大でも2匹。この繁殖率の低さも個体数の減少に繋がっていると言われています。


母サメの左右にある二つの子宮。その中には無数の卵がありますがそこでは、私たちが想像もできないほどの神秘的で強烈な、生存競争が繰り広げられています。それは、共食いを勝ち残って生まれるシロワニの「過酷でドラマチックな誕生の物語」なのです。 

3. 小笠原、シロワニ研究の最前線へ

小笠原ではこれほど身近な存在であるシロワニですが、その生態の多くは未だ謎に包まれています。
今回、シロワニの調査を行っている「NPO法人小笠原シロワニ保全研究会」の理事長であり水族館「マリンワールド海の中道」館長である中村雅之さんから、調査の最前線と保全において大切なことは何かを教えていただきました。

NPO法人 小笠原シロワニ保全研究会 中村雅之さん

小笠原シロワニ保全研究会とは?

 

本研究会は、小笠原スキューバダイビング安全対策協議会、大学、シロワニを飼育している水族館をメンバーとして2024年2月に設立されました。

 

個体識別やデータから見えたもの

小笠原でのシロワニ調査は、2018年に個体識別調査が開始されました。ダイバーの方々の協力により、小笠原群島全体で撮影された2,688枚の画像から122個体が識別されました。そのうち父島列島では、2,608枚の画像から106個体(オス58個体・メス47個体・不明1個体)が個体識別されています。

これらの識別リストと、2025年〜2026年の潜水目視調査から、父島列島周辺に生息するシロワニの個体数は「116個体(※)」とはじめて推定されました。これからも母島・聟島での調査を継続し、小笠原群島全体での個体数推定を目指します。(※シュナーベル法:再捕獲データから全体の生息数を算出する方法)

潜水目視調査の様子 (写真提供:NPO法人小笠原シロワニ保全研究会)

また、機器を用いた行動調査も進んでいます。2020年には5個体に音響・衛星発信機を、2023年には9個体に音響発信機と行動記録計を装着しました。
現在は群島内に計22台(父島14台・母島3台・聟島5台)の受信機を設置し、列島間の移動や滞在をモニターしています。
回収したデータからは、冬季は浅い海域に滞在し、夏季には水深68.0mや119mの深場へ移動するという、季節的な浅深移動が確認されました。

衛星発信機・超音波発信機が装着された個体 (写真提供:NPO法人小笠原シロワニ保全研究会)

さらに現在は、採取された試料のDNA解析から、過去3,500年間にわたる個体数の変動を調べています。日本では縄文時代の貝塚からもシロワニの痕跡が見つかっており、彼らは古くから日本の海に存在していました。

今回の研究は、その時代まで遡って生態を追うものです。アメリカで進められている分析の結果が出る今年の年末には、シロワニたちの過去から現在に至るまでの生息個体数の変動が明らかになります。

シロワニを守るためにできること

かつて1960年代には東シナ海でも捕獲されていたシロワニですが、その後、記録は途絶え、本州の太平洋沿岸でも姿を見ることがなくなりました。

現在、小笠原群島に暮らすシロワニは、日本国内で最後の野生個体群となったのです。
シロワニを守ることは、国内で唯一彼らが生き残っている「小笠原の美しい海」そのものを守ることだと、私は考えています。

4. 旅の続きは、スカイツリーの麓で

1,000kmにおよぶ航海を終え、東京へ戻ったあなたを待っている場所があります。
墨田区、東京スカイツリーの足元に位置する「すみだ水族館」。 あの大水槽の中で悠然と泳ぐシロワニたちは、実はここ小笠原の海からやってきた個体たちです。

小笠原の海で感じたあの緊張感と感動。それを都会の真ん中で反芻する贅沢。
「また、あの青い海へ帰ろう」
水槽越しにシロワニと目が合うたび、あなたの心は再び小笠原の海へと誘われるはずです。冬に見たあの大きな巨体が、ゆらりと目の前を通り過ぎる。
「あの海と、この水槽は繋がっている」
その実感を噛み締めながら、旅を締めくくるのはいかがでしょうか。

すみだ水族館内「小笠原大水槽」 (写真提供:すみだ水族館)

ページ運営者

小笠原村観光局

小笠原村観光局は浜松町に事務所を置き、旅行会社・メディア対応、イベント実施などにより小笠原観光の活性化・マーケティング活動を行っています。

https://www.visitogasawara.com