教育旅行

小笠原村教育旅行インタビュー 獨協中学高等学校

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小笠原村には、毎年さまざまな学校が教育旅行として訪れます。
本インタビューは、そうした学校の先生方にお話を伺い、小笠原という場所でどのような学びが生まれているのかを、実践の視点から紹介しています。

今回お話を伺ったのは、獨協中学高等学校で理科(生物)を担当され、小笠原への教育旅行を引率されてきた渡邉先生です。
教育旅行としての訪問はこれまでに2回。さらに先生ご自身も、生物部の活動として父島を3回、母島を2回訪れた経験があり、今年も小笠原への訪問を予定されています。

同校の小笠原教育旅行は、全員参加の修学旅行ではなく希望制で実施されているのが特徴です。申し込み前に説明会を行い、内容を理解したうえで希望する生徒が申し込む形をとっています。訪問先は母島が中心で、定員の都合から選考を行う年もあるほど関心が高い取り組みになっています。
現地では、固有種の観察や外来種問題、生物多様性保全の現場を“見て学ぶ”体験が軸となり、離島ならではの時間感覚や暮らしの背景も含めて、学びが広がります。

本記事では、渡邉先生が小笠原を教育旅行先として選んだ理由、保護者の不安への向き合い方、母島で得られた学びの実感、そして学校内外の反響までを、実体験に基づいて振り返っていただきました。

小笠原村教育旅行インタビュー|獨協中学高等学校

小笠原村教育旅行|獨協中学高等学校

教育旅行先として選んだ理由を教えてください

渡邉先生:一番大きいのは、生物の学びとしての魅力です。
小笠原は固有種がとても多く、離島ならではの独自の進化を遂げた生き物を観察できます。その点は、他の地域ではなかなか得られない価値だと感じています。

もう一つは、海外ではないことです。
海外研修ほど費用の負担が大きくなりすぎず、現実的な条件の中で“本物のフィールド”を体験できます。このような、生物の学びとしての深さと、実施可能性のバランスが取りやすい点も魅力でした。

さらに、小笠原は歴史的にも独特です。数奇な歴史や産業があり、そして東京都に属している。理科の学びを軸にしながらも、地域そのものへの理解が広がっていく感覚があります。

旅行前に、保護者の不安や懸念はありましたか?

渡邉先生:片道24時間以上の船旅ということで、生徒の船酔いを心配される保護者は少なくありません。
そのため、事前に、酔い止めの準備など具体的な対策も含めて伝えています。ただ、本プログラムは希望制の旅行のため「それでも行きたい」という生徒が申し込んできます。

もう一点、船内で携帯がつながらないことを不安に感じる声もあります。
小笠原海運のウェブサイトなども使いながら、船内の様子や過ごし方が具体的にイメージできるように説明会資料を用意しています。レストランやラウンジ、売店などの実際の写真やメニュー表をお見せするだけでも安心感が変わる印象です。

生活面のお声もいただきますが「離島の環境であること」を前提にしながら、事前に情報をそろえておくことで納得感を持ってもらいやすいと感じています。


※2025年6月6日東京発便おがさわら丸船内における、Wi-Fiサービスの有料提供が開始されました。
詳細はURLからご参照ください。https://www.ogasawarakaiun.co.jp/info/?p=12763

現地で特に印象に残っている体験はありますか?

渡邉先生:生き物の体験で、最初に印象に残っているのは外来種の存在です。
港に着いて歩き始めると、まだフィールドに入る前の段階で、グリーンアノールやアフリカマイマイが当たり前のように目に入ってきます。

生物の教科書に記載されている外来種が「探さなくても見えてしまう」という状況に、
生徒はまず驚きます。固有種を学ぶ前に、外来種が日常の風景としてそこにいる。
その光景を目にしたことで、外来種問題が“説明される話”ではなく「すでに起きている現実」として立ち上がってきたように感じました。

また、外来種を入れないための対策「靴底の消毒」に強い印象を覚えている生徒が多いですね。「ここまで徹底するのか」と驚きながら、その理由を考えるきっかけにもなっています。
他にも、ウミガメが身近に見られたり、サメが群れている場所があったりと、生徒の反応が大きい場面はいくつもありました。
歴史の面では、日本軍の遺産に実際に触れられる場所があることも、他の観光地との違いとして印象に残ったようです。

父島ではなく、母島を中心にしている理由はありますか?

渡邉先生:私自身も父島は好きです。ただ、生物教育という点では、母島の環境そのものが限られているからこそ、生徒の視線が自然や生き物に自然と集まります。
また、来島者数が極めて少なく、それ故本土の外来種の影響が父島よりも少ないという部分も魅力的であると考えています。

結果として、生物の観察や考察に集中しやすいフィールドになりました。
さらに、安全面も理由の一つです。生徒に自由行動をさせる場面でも、母島は見通しが立てやすく、「この範囲で行動していいよ」と言える安心感は、運用面でも大きいと感じています。

小笠原村教育旅行インタビュー|獨協中学高等学校

小笠原村教育旅行|獨協中学高等学校

学習の成果として、どのような学びが得られたと感じますか?

渡邉先生:生物多様性の理解、という点ではとても大きいです。
たとえば、固有種の保全活動を知る中で「外来種がどれだけ多様性を壊してしまうのか」という話が、教科書の知識ではなく実感になります。

生徒の反応で印象的だったのは「外来種と固有種の関係」に踏み込んだ発言が出てきたことです。駆除すれば解決、という単純な話ではなく、すでに環境の中に取り込まれてしまっている現実がある。
そうした複雑さに自分なりの言葉で触れようとする姿がありました。

また、24時間の船旅そのものが、時間や距離を体感する学びになっています。
船内では電波が通じない時間が長くなるので、スマホに頼らずに過ごす経験になりますし、船の中を探検して楽しむ生徒もいました。
年度末の時期に訪れると、島を離れて本土の高校に向かう小中学生の姿に出会うこともあります。同じ年代の子が、島を出て進学する。そうした場面に触れることで「家に帰れば家族がいる」ことが当たり前ではないと気づく生徒もいたようです。

小笠原の受け入れ体制で、印象的だったことはありますか?

渡邉先生:宿泊施設の食事です。育ち盛りの生徒が喜ぶメニューを工夫してくださっていると感じます。生徒がよく食べてくれるので、現地での体力面にもつながっていると思います。

生活面でも「離島だから不便」という印象はあまりありません。
必要なものは島内である程度揃いますし、困る場面は少ないです。

それから、地域の距離感も特徴的です。島の方が生徒に声をかけてくださる場面があり、生徒が「みんな知り合いなの?」と驚くこともありました。

人口規模を実感するきっかけにもなっています。ガイドとの関係も、日を追うごとに近くなっていきました。
呼び方が変わるくらい、生徒の距離が縮まっていく様子を見ると、環境そのものが関係性を育てているのかもしれないと感じました。

保護者や学校内での反響はいかがでしたか?

渡邉先生:生徒が小笠原での体験を頻繁に話してくれます。保護者がそれを聞いて「良かったね」と感激してくださることも多いです。

希望制ということで、本当は希望する生徒全員を連れていきたい気持ちで一杯ですが、
残念ながら島のキャパシティの関係で上限人数が決められており、毎年選考をしなくてはならない状況です。

生徒の意欲が高く、倍率が3倍程度になる年もありますが、落選しても翌年もう一度申し込む生徒もいます。それだけ「行きたい」と思わせる体験になっているのだと思います。

文化祭でもこの教育旅行プログラムを紹介したところ、これから入学を検討している学生や保護者から
「是非とも息子を参加させたいが、何年生で行けるのか」といった問い合わせが多くありました。学校内でも関心が広がっている実感があります。

小笠原村教育旅行インタビュー|獨協中学高等学校

小笠原村教育旅行|獨協中学高等学校

学びを「体験」で終わらせないための設計

獨協中学高等学校の小笠原教育旅行は、旅行前の説明や情報共有には特に力を入れてきました。船での移動時間や船内での過ごし方、現地の生活環境などについても、良い面だけでなく「離島であること」を前提に、具体的に伝えるようにしています。

現地では、固有種の観察や外来種問題、生物多様性保全の取り組みを“目で見て学ぶ”機会が連続します。さらに、移動時間そのものや島の暮らしに触れる時間が、教科を越えた学びの入口にもなっています。

「生物が好きだから行く」という動機から始まった体験が、結果として視野の広い学びにつながっていく。
そうした積み重ねが、生徒自身の納得感や保護者の理解につながり、参加希望の広がりやリピート希望という形で表れているのだと感じています。

小笠原村教育旅行インタビュー|獨協中学高等学校

小笠原村教育旅行|獨協中学高等学校

小笠原村を教育旅行として検討する先生方へ

渡邉先生:小笠原は、いわゆるテーマパークのような場所ではありません。
だからこそ学びになる一週間になるのだと思っています。

生物の学びとして固有種や外来種の問題を実際に見られること、
離島の時間や距離を体感できることは、小笠原ならではだと感じています。

ページ運営者

小笠原村観光局

小笠原村観光局は浜松町に事務所を置き、旅行会社・メディア対応、イベント実施などにより小笠原観光の活性化・マーケティング活動を行っています。

https://www.visitogasawara.com