
東京から南に約1000km。亜熱帯に属している小笠原諸島は、年間を通して暖かく、南国のイメージを持たれる方も多いかもしれません。
栽培されているフルーツの多くは、まさに南国のフルーツ!
そのひとつが、今回ご紹介する「パッションフルーツ」です。
パッションフルーツは、さわやかな香りと甘酸っぱい味が特徴の果実。
南米が原産ですが、日本でも明治時代以降に亜熱帯の地域で栽培されるようになり、いまでは、沖縄県、鹿児島県についで東京都が3番目の産地となっています。そして、そのほとんどが小笠原村母島で収穫されているものです。
小笠原といえばパッション!パッションといえば小笠原!というぐらいメジャーなフルーツなのですが・・・
パッションフルーツってどんな果物かちゃんと知っていますか?
日本でも栽培されているとは言え、スーパーで普通に売られている果物とは違って、
- 名前は知っていても食べたことがない
- 食べたことはあるかもしれないけれど、どんなフルーツだったっけ?
- あぁ、アレね!でも、どうやって栽培されているのかは知らない
というのが、悲しいかな大半の方からいただくコメントです。(地域差はあるのかもしれませんが)
パッションフルーツはどのように栽培されているのでしょうか?
気になって、母島の農家さんを訪ねてみました。
パッションフルーツを実際に見てみたい!
訪れたのは「藤谷農園」。海の近く、高台に広がる畑でパッションフルーツをはじめ、ドラゴンフルーツやミニトマト、レモンなどを栽培されています。
ちょうど最後の収穫の時期(7月中旬)にうかがうことができました。

お話をしてくれた方:ともかさん
学生時代に鯨の調査ボランティアに参加して、小笠原諸島を訪れる。
農業をやりたくて、ツテを探して、たどり着いたのが父島のパッションフルーツ農園。
そこでしばらく農業をしてから、20年ほど前に母島にて独立。
現在は、ご夫婦で農園を切り盛りされています。
– 母島でのパッションフルーツ栽培について教えてください。
ともかさん:
母島には、父島よりも農家がたくさんいます。パッションフルーツは、もともと自生していたものではないのですが、栽培歴も長く、母島の農家で栽培しているもののなかではメインになってきていると思います。もちろん、父島でも作ってはいるのですが、母島のほうが農業に適しているので、たくさん採れるんです。

12月から花粉付けをしたもの(2018年3月初旬撮影)提供:藤谷農園
– 今がちょうど最後の収穫の時期とのことですが、小笠原でのパッションフルーツ栽培のシーズンはいつからいつまでなのでしょうか?
ともかさん:
母島のパッションの季節は冬から春なんです。最近では電照栽培(*2)の導入で、日照時間を長くして花芽を形成させ、12月後半から花を咲かせることができます。通常だと、3月過ぎから花粉付け(*1)の作業に入りますが、受粉作業をしてから、収穫までは2カ月以上(*3)かかります。

パッションフルーツの花 提供:藤谷農園
そうやって、少しずつずらして栽培することで収穫の時期は、4月〜7月上旬と長めです。今はちょうど最後の収穫の時期です。7月末には片付けに入って、9月にまた次のシーズン用の苗を植えるサイクルになっています。
*1 安定して実らせるための受粉作業で、手作業で行われています。電照栽培で早咲きのものは、もっと早い時期に受粉作業に入ります。
*2 電照を利用する栽培法で、収穫期を人工的に変動させることが可能。
*3 受粉から収穫まで寒い時期は3カ月ほどかかることも。
– 「旬=夏」のイメージの果物でしたが、夏前には収穫がほとんど終わっているんですね!といっても、小笠原の夏の到来は早いので、間違ってはいないのでしょうが・・・

袋に入れられた完熟間際のパッションフルーツ 提供:藤谷農園
– ところで、1つ1つが袋に入れられて実っていますが、この袋は何のためのものなんですか?
ともかさん:
パッションは完熟すると、ポトリと落ちてしまうんです。実は皮が固いのに、とても衝撃に弱いということで、完熟前に落とさないのために袋に入れています。

提供:藤谷農園
– ひとつひとつ手作業で行われているとのこと、とても大変そうです。ほかにも何かパッションフルーツならではの苦労はありますか?
ともかさん:
パッションの実には、太陽の光をまんべんなく適度に当てなくてはいけないのですが、どんどん伸びる(*4)枝や葉を刈るなど、対策が必要です。かといって、日焼けさせるわけにはいかないので、調整しながら作業しています。
あとは、雨から来る円斑病(まるはんびょう)という病気と地面との境のところが腐ってしまう疫病のふたつの病気との戦いもあります。これは、ビニールハウスなどで雨よけをすること、地面との境をずらすことで、だいたい防げています。
*4 ほかの果樹は、成長期〜開花期〜果実肥大期など、時期によって成長する部分が替わるのが一般的。実を付けながらも、まるで草のようにずっと、どんどん伸びていきます。
– きれいに整枝され、愛情たっぷり育てられているパッションフルーツ。絶対美味しいに決まってますね!最後に、オススメの美味しい食べ方を教えてください。
ともかさん:
半分に切って、スプーンですくって食べるのが一番です!
冷蔵庫の中に長い間入れておくと、酸味が増してしまうので、食べる直前に冷やすのがオススメです。

小笠原村母島「藤谷農園」のパッションフルーツ情報
「藤谷農園」のパッションフルーツは、低農薬または無農薬で育てられています。
収穫時期は、6月頃がピーク。
公式サイトから注文できる通信販売は、5月上旬〜6月下旬のお届けです。注文予約数には限りがあるので、今シーズンはそろそろチェックし始めてみるとよいかもしれません。
農園では、ほかにもドラゴンフルーツ、レモンやミニトマトなども栽培されています。

提供:藤谷農園
他にも小笠原のJA直営のお店でも通信販売を行っています。
小笠原産直市場(JA直営のお店)
https://store.shopping.yahoo.co.jp/ogasawara-market/

提供:藤谷農園
「東京都産」のパッションフルーツは、とても希少です。
確実に味わいたいという方は、収穫の季節にぜひ小笠原を訪れてみてください!

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