都会のど真ん中にある、新宿区立鶴巻小学校の4年生のみなさんが、授業で「小笠原諸島」を学習しました。実際に授業を担当をされた、糟谷友子先生にお話を伺いました。

写真右が糟谷友子先生
小笠原の授業を始めたきっかけは?
小学校4年生の社会科学習の一つに、自分達の住む「都道府県内の特色ある地域の様子について」の学習があります。この学習では、その特色ある地域の位置や自然環境、人々の活動や産業の歴史的背景、人々の協力関係などに着目して、地域の様子を捉え、それらの特色を考え、表現します。
そして、人々が協力し、特色あるまちづくりや観光などの産業の発展に努めていることを学ぶのです。事例地として取り上げるのは、自然環境や伝統的な文化など、地域の資源を保護・活用している地域。
東京都でこの学習を行うためには、どこを事例地にあげようか・・・。そんな時、私が惹かれたのが、この小笠原でした。

都庁の観光案内所に掲示された小笠原トリビアボード
行けるのは一週間に一度だけ。24時間の船の旅。その到着を「おかえり」と迎えてくれる人々。ボニンブルーの美しい海。満天の星空。首都でありながら、世界自然遺産に登録されるほどの自然環境。こんなに神秘的な場所が東京都にはある。そして、様々な立場の人々が、その自然環境を守り、生かしてくらしている。笑顔いっぱいで。
「子供たちにこの小笠原で学ばせたい。」
そう思って出向いた都庁の観光案内所。そこには、偶然にも小笠原の特設コーナーがあり、なんとも惹かれる9枚のトリビアボードがありました。思わずぐっと近づいて見ると、そこには島の秘密や美しい写真、映像「心、動く島。」。そして、おがじろう。あっという間に、心が動かされ、小笠原の虜に!
ところが、残念な事に、次に都庁を訪れた時には、展示物はなくなってしまっていたのでした。「もう一回見たい!」その一心で私の小笠原村観光局への旅が始まったのです。その魅力的な取り組みや、次々と発信される情報のセンス、みなさんの人柄に惹かれて、この学習の単元を通して小笠原村観光局の皆様にご協力いただくことを決めました。なかなか取材に行けない小笠原。皆様のご協力のおかげで、人の輪がつながり、素敵な方々とたくさん出会うことができました。
また、使用させていただける貴重な映像や写真も豊富で、簡単な申請で手に入れることができました。
感謝!
私が一番惚れこみ、実際に授業で流した映像資料です。2分間に、小笠原の魅力や小笠原村観光局の方々の思いがたくさん詰まっています。
皆様もぜひご覧ください。
授業の内容を教えてください。
子供の心も動かす魅力!

小笠原の動画を見入る子供たち
授業冒頭で上記の動画「心、動く島。小笠原」を見た子供たち。壮大な自然や愛らしい動物たち、おがさわら丸、人々の笑顔に、一気に島の魅力に引き込まれていきました。
「うわぁ、きれい!」「南国みたい!」「これ沖縄じゃない?」
など、子供たちの反応は様々。

トリビアボードで場所を隠して特色を説明
小笠原村観光局が作成した「トリビアボード」の地名を隠して見せ、島の特色を説明し、先程の映像がどこなのかを考えました。
そしてこの島が小笠原村で、自分達の住む新宿区と同じ東京都であることを知ると、「え!」「すごい!」「東京都にこんなに綺麗な海があるの!?」と驚きと憧れの声が。
「なんでこんなに綺麗なの?」「もっとたくさん自然があるのでは?」「観光客の方に楽しんでもらう工夫があると思う!」「こんなに近くで撮影できるのだから、きっと人と動物が仲よしなんだと思う!」と一気に教室が驚きと疑問でいっぱいになりました。
そして
小笠原の人々は、自然環境を生かしてどのようにくらしているのだろう。
という学習問題のもと、本単元の学習を進めていきました。
自然の魅力!
「こんなに自然がたくさんあるんだから、まずは自然を調べたい!」そんな思いと共に始まった調べ学習。自然が大好きな子供たちは、小笠原の自然環境について次々に調べを進めていきました。興味があることから手分けをして調べて、みんなでその情報を持ち寄って。
それに、小笠原関係の本もこんなにたくさん!
いかに小笠原の自然環境が豊かなのかも実感し、目はもうキラキラ。


ゲストティーチャー登場!
5時間目には小笠原村観光局の大久保さんに来ていただき、小笠原の人々が実際にどのように自然環境を生かしているのか、どのようにして自然環境を守っているのか、おがじろうと大久保さんの対談形式でお話をうかがいました。「ホエールウォッチング」や「ねこまち」、「ルールブック」など、たくさんの取り組みを聞きました。
小笠原を思って今も活躍する方と直接お会いし、話を聞いたり質問をしたり。中には、「これまで自分が調べてきたことを聞いてほしい。」と関わろうとする子もいました。ただお話をうかがうだけではなく、対話が生まれました。いつの間にか、大久保さんともすっかり仲良しに。VRでの小笠原旅も最高でした!


自然を生かし守る島民の想い!
「自然を触らないことが自然を守るということではなく、自然と触れ合って楽しむ。それこそが守るということだと思います。」
ツアーガイドをされている竹ちゃんさんの話に心動かされた子供たち。人々が、自然環境を守るためにルールを作り、観光客もそれを守り、今の小笠原の美しさがあります。そして、人々はそれを楽しみ、自然と触れ合っているのです。
子供たちは、その明るさにまたしても憧れいっぱいに!
そして、世界自然遺産に登録されるまでの経緯と人々の努力を知った子供たち。その偉大さに改めて感動していました。そして、今も守り続けていること、これからも守り続けていくという思いで取り組んでいることを資料から読み取り、考えました。
「小笠原はこれからも守っていくべき。」なんて言葉を残した子もいました。

医療の実態を覗き、航空路について考える!
表参道で開催された「小笠原アカデミー」に参加させていただいて知った、島の医療や生活の実態。これもまた小笠原。そこには、小笠原をより良くしようと、これまでも、そして今も力強く努力し続けている人々がいました。
子供たちにも新たな資料として、島の医療や生活の実態を提示し、それらを基に航空路について話し合う活動を行いました。様々な思いで揺れる中、同じ都民として、真剣に小笠原の未来を考えました。
過去から現在、そしてより良い未来へ!


社会から学び、また社会へ発信!
学習したことをまとめ、それらをいかして、小笠原村観光局が作成しているトリビアボードの鶴巻小学校版を子供たちが作成しました。もちろん、小笠原の魅力、小笠原の人々の魅力をPRするために。そこには深い思いや願いがあり、力作揃い!


子供たちが作ったトリビアボード

どれも力作ばかりです!
授業の感想を教えてください。
小笠原の魅力はもちろん、教材としての魅力も素晴らしいことを改めて実感しました。
今回、小笠原の学習で生かした見方・考え方は、着実に子供たちの中で育っています。そのため、子供たちは、事例地が変わっても資料を活用して社会を見ることができています。単元が変わっても、大人になっても、きっとずっと生かされていくことでしょう。
小笠原の教材研究を始めてから、ツーリズムEXPOや小笠原アカデミー、アイランダーなど、様々な企画にも参加させていただきました。テレビ番組の特集もたくさん見ました。やっぱり小笠原は魅力的なのです。東京都の宝、日本の宝、世界の宝なのです。
私個人としても、小笠原の魅力を広めたい。教員としても、教材としての小笠原のよさを伝えたい。そんな思いでいっぱいになりました。これからも小笠原に注目し、東京都の宝として、教材化していきたいです。
そしてね、子供たちはにっこり笑顔で言うのです。「みんなで小笠原に旅行に行きたいね。」って。
おわりに
小笠原村観光局では小学校から大学、専門学校など小笠原の授業のサポート(情報提供、資料提供など)を行っています。
詳しくはお問い合わせください。

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