自然

地球最後の秘境?原生の自然が残る「南硫黄島」

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小笠原ビジターセンターでは、2017年に行われた「南硫黄島自然環境調査」において、現時点で明らかになった成果や調査に至るまでの準備、現地の様子などを展示した、特別展「南硫黄島」を開催しています。

南硫黄島

東京から南に約1300km。

過去に人が定住した記録がないため人為の影響をほとんど受けておらず、未だネズミ類の侵入もなく、厳重に原生自然が維持されている島。

それは、火山(硫黄)列島の最南端にある南硫黄島(みなみいおうとう)です。

南硫黄島

最高標高は小笠原諸島最高峰の916mで周囲は約7.5km。平均斜度は45度という急峻な地形で、外周は強い波で削られた断崖絶壁に囲まれています。

およそ、皇居の外周ほどの面積に、スカイツリー+東京タワーの高さの山が海面から飛び出している感じです。

山頂部を含む上陸調査は、過去に3回(1936年、1982年、2007年)行われています。
2007年の調査では、地形・地質及び植物・動物の基礎調査が実施され、新種を含む多くの絶滅危惧種の生息・分布が確認されました。
貴重な自然が残されていることが判明した一方で、外来種の脅威にさらされている状況も明らかになりました。
前回調査から10年が経過した2017年、南硫黄島の生態系の現状把握及び価値を評価すると共に、保全推進等の基礎資料収集のため、南硫黄島自然環境調査が行われることになりました。
今回の調査は、東京都・首都大学東京・日本放送協会(NHK)が連携し実施されました。

南硫黄島はおよそ3万年前に誕生した島です。
父島の誕生が約4800万年前ですので、桁違いに若い島のため、生態系形成の初期段階を見ることができます。
また、原始の自然を残す場所として島全体が「天然記念物」に指定され、さらに「原生自然環境保全地域」にも指定され、立ち入りが禁止されるなど、手厚く守られている場所です。
それゆえ、調査に当たっては、南硫黄島へ持ち込むもの、南硫黄島から持ち出すもの全てに対して検疫処理を行いました。

南硫黄島

持っていくものは可能な限り未開封の新品を購入し、そうでないものは、エタノール洗浄・凍結処理・高温処理を行います。そして、検疫を通過した荷物を保管する場所(クリーンルーム)は室内へ生物が侵入しないよう目張りなどをします。最終的に、南硫黄島へ荷揚げする際には、ボートから直接陸へは揚げずに海水を経由することで、表面についた生物の洗浄を行います。もちろん、上陸する人も海水洗浄をするため泳いで上陸します。
ちなみに、上陸する人は1週間ほど前から、種子を含むもの(トマト、フルーツなど)を食べないように制限しました。(排泄物は全て持ち帰りますが、念のため食事制限を行いました。)

こうして、やっと上陸ができます。でも、ここからが、もっと大変!

ビーチにベースキャンプを設置するのですが、優雅に波の音を聞きながらテント生活とはいきません。

南硫黄島
南硫黄島

地面には大きな石があり、常に落石と高潮に注意しながらのテント生活になります。
食事は必要最低限のエネルギー補給。もちろんお風呂もありません。

南硫黄島

ベースキャンプも設置し、さぁ、すぐに調査だ!・・・というわけにもいきません。
最初に説明したとおり、南硫黄島は断崖絶壁の島。道が整備されていないため、簡単に登ることはできません。

南硫黄島
南硫黄島

ここで登場するのがプロの登山家たち!
まずは山岳班が、安全に登れるようにルート工作をします。

南硫黄島

安全なルートが確保できたら、次は必要な食料や水を運び上げ、すべての準備が整うと研究者に同行して登山をします。研究者たちは一度の登山ですが、山岳班は調査を終えた彼らを下山させるまで、少なくとも三回は登山をしなくてはなりません。

南硫黄島

このように、山岳班の心強いサポートを受け、研究者たちは安全かつ迅速に調査を行うことができます。
史上4回目となる2017年調査の特徴はマクロとミクロの視点を加えたことです。
その調査の成果をこれからご紹介します。

11アカアシカツオドリ

まず、日本国内で初めてアカアシカツオドリの集団繁殖が確認されたことです。以前から南硫黄島ではアカアシカツオドリの生息は確認されていましたが、人間にはとても行くことができない、崖に生える樹の上にコロニーがあるため、繁殖の証拠を掴めずにいました。そこで最新技術のドローンを駆使してコロニーを上空から観察したところ、巣の中に卵や雛を確認することができました。

シマクモキリソウ

シマクモキリソウ

つぎに、絶滅したと考えられていた幻のラン科植物「シマクモキリソウ」の再発見です。
山頂調査中に発見されたその植物は開花していなかったため、現地での正確な種同定はできませんでした。そこで株を持ち帰り、飼育を続けると見事に開花。それは紛れもなく「シマクモキリソウ」だったのです!

13土壌動物

そして、初めての本格的調査が実施された土壌動物にも注目!です。
土壌動物たちは土を作りながら土にくらす生きものです。海洋島にはいないとされていたフトミミズ、複眼も後翅も退化した南硫黄島固有の新種と考えられる甲虫(1mm)も土壌から発見されました。

また、外来生物についても分かってきたことがあります。
2017年に目立ったのは、オオバナノセンダングサ。10年前の調査ではなかったこの植物が、海岸部や登攀ルート沿いの崩落地から、あちらこちらで花を咲かせていました。この他にシンクリノイガやナハカノコソウもたくさん見られるようになりました。
人間が上陸していない島にどうやって侵入してきたのでしょうか?

アナドリ

アナドリにナハカノコソウの果実がくっついています。他に、羽毛にたくさんの種子を付けた海鳥の姿も見つかっており、彼らが運び屋になっていると考えられます。また、今回の調査では南島で足環をつけられたカツオドリが見つかりました。これは島間で交流があることを示しているので、南島など海鳥繁殖地で外来植物を管理することが、南硫黄島の自然を守ることにつながります。

今回の調査では、実踏調査の他にNHK撮影班によるドローンでの撮影を行いました。ドローンの登場で、人間が到達不可能な場所を見ることが可能となり、飛躍的な進歩を遂げたと言えます。

南硫黄島

特別展では臨場感を感じていただくため、南硫黄島の1/2000サイズの模型があります。こちらをご覧いただければ、いかに南硫黄島が断崖絶壁であるかを感じていただけるかと思います。

南硫黄島

未だに謎が多く、世界的に見ても貴重な自然が残る、奇跡の島「南硫黄島」。その調査結果を分かりやすく展示しています。来年の1月10日まで開催していますので、じっくりとご覧ください。

皆様のご来場をお待ちしております。

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