ミドコロ①:今日は山頂見えるかな?
今回ご紹介するのは、ははじま丸を降りた沖港から集落の後ろに見える乳房山。
聟島・父島・母島列島のなかで一番高い山です。標高は463m。
この標高こそが母島の豊かな自然を作っています。
海からの湿った空気が乳房山にあたって上昇し、約300mの高さで水蒸気が霧になり「雲霧帯」と呼ばれる湿った環境を作り出します。
雲霧帯の中の森を「雲霧林」といい、この独特の環境の中には世界中で母島にしかいない多くの固有種が息づいています。

その乳房山に出発する前に、ミドコロ①があります。
それは港から観る乳房山!
集落は晴れていても山頂近くは雲霧帯の中で見えないこともしばしば。
今日は山頂見えるかな?
登山口に注意!
乳房山遊歩道は、本来、ぐるりと周回できるルートですが、2021年6月現在、山頂近くががけ崩れを起こし落石等の危険があるため一部を通行止めとしています。
そのため、山頂へ行くには西側のルートを登る必要があります。
下山は来た道を引き返します。登山口には注意看板等も設置されているので、登る前にここから山頂に行けるのか掲示物をチェック!

しっかり外来種対策を!
写真の場所が西側ルートの登山道入り口。東側ルートの入り口はこれより少し手前にあります。入り口にあるブラシマットと箱は外来種除去ボックスです。
貴重な自然の残る乳房山に外来種を持ち込まないために

入山前には必ず
① 靴の泥を落とす
② お酢スプレーを靴底にしっかりかける
③ 粘着シートで服やザックについた種子等を取る
を徹底してください。
それが終われば、いざ出発!!
ミドコロ②:休憩舎からの空心菜

登り始めは結構きつい!!
汗をかき、足が重くなりつつ頑張ると一つ目の休憩舎が出現します。
山頂まで4分の1のところまで来たので、ここでひと休憩と共にチェックポイントをご紹介。
この休憩舎の屋根は小笠原固有種の「オガサワラビロウ」というヤシの一種を使った「ビロウ葺き」という島の伝統的な工法で作られています。
昔の小笠原の家の屋根はみんなこんな感じだったんですよ。
そして、この休憩舎から谷のほうを見てみましょう。
ここで言われなきゃ絶対わからないマニアックなミドコロ②!
木の隙間から水面が見えます。池?沼?
これは、母島島民の飲み水を支えている「乳房ダム」です。

さらによーく見ると、ダムの上に何やら白い格子状の構造物が浮かんでいますが…?
実はここで「空心菜」という野菜を育てています。
空心菜にはアオコの発生を抑えるなど水質浄化の作用があるそうで、水質改善のために乳房ダムの水で水耕栽培を行っています。

もりもり育つ空心菜。ダムを守るし、おいしい!一石二鳥ですね。

育った空心菜は収穫されると、時々村役場で販売されます。
販売している日は、役場に「新鮮野菜」ののぼりが出ているので要チェック!
(※ただし農業害虫拡散防止のため島外に持ち出すことはできませんので、母島で自炊をしながらご滞在予定の方は、是非ゲットしてみてください)
ミドコロ③:霧の中の水まんじゅう

山頂まで約半分のところにあるフォトスポット
どんどん登っている途中、突如現れる巨大ガジュマルでは、映え写真を撮るのも忘れずに!さらに汗をかきかき登っていくと、休憩舎が現れます。
ここで山頂まであと500m!
このあたりからいよいよ雲霧林に入り、コケやシダも増えてきます。
水分を含んでしっとりしたコケに触れてみたり、一本の木に何種類のコケがついているかじっくり観察してみたりするのも一つの楽しみ方ですね。
コケは剥がれやすいものも多いので触るときはそっと優しく、足元にも多いので歩くときは踏まないように気を付けてください!

宝石のように水滴をまとう「コヒノキゴケ」
そして、雲霧林の中で探してほしいミドコロ③が母島固有種のカタツムリ「オガサワラオカモノアラガイ」です。
天気のいい晴れた日よりも、霧がかかるような湿った日のほうが遭遇率アップ!
まるで水まんじゅうか葛餅のような半透明な体と、体が入りきれない小さな殻がとってもキュート♡この小さな殻こそ、乾燥対策が不要な雲霧林の湿潤な環境に適応して、殻が小さくなる進化をした結果です。
小さな体に地球の永い歴史を感じます。

この写真の中に「オガサワラオカモノアラガイ」を何匹見つけられるかな?
ミドコロ④:山頂を超えて母の愛を感じる
ついに山頂に到着!!そこから見える景色は…?
絶景か、あるいはな~んにも見えないことも。ミドコロ①でご紹介したとおり、雲霧帯だから雲の中にいることもあります!
そんな時は「何にも見えない!」とがっかりするより、これも「母島らしさ」と思って真っ白な空間を堪能してください(笑)。そして晴れた景色を眺めにまた母島にお越しください!
ここで折り返し…の前に!通行禁止の折り返し地点まではあともう200mほど進めます。行く人は少ないですが、実はこの先にミドコロ④があります。

それは、大きな「テリハハマボウ」の木。
大きく横に張り出した枝の上に数多のシダやコケなどが所狭しと生えています。
みんなを乗っけて悠々と育つその様はまさに母のようで、私はこの木をマザーツリーと呼んでいます。
ぜひここまで来て、ゆっくり深呼吸してみてください。

マザーツリーという表現がぴったりな「テリハハマボウ」の巨木
この先に通行止めの看板がありロープが張ってありますので、ここから折り返して、
帰りも楽しみながら気を付けて下山してくださいね。
乳房山ミドコロ案内~山頂(西側)ルート編~いかがでしたか?
今回は乳房山山頂(西側)ルート編をご紹介しました。
これを読んだあなたはきっと、東側ルートのミドコロも気になってきましたね?
ご安心を!次回の記事でご紹介しますので、お楽しみに!!
小笠原は今年で世界自然遺産登録10周年。
世界遺産の森を気兼ねなく訪れられる日が早く来るといいですね。

ネイチャーガイド
irie isle (アイリーアイル) 宮川 五葉
福岡に生まれ、沖縄本島→石垣島→奥多摩と端っこを攻め続け、やっぱり南の島がいい!と母島に移り住み10年目、ここを終の棲家と定める。現在は東京都レンジャーとガイドの2足の草鞋を履いて活動中。仕事で山に行くので遊びは海派。植物は味で覚える派。飲み物はビール派。
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