小笠原ではさまざまな種類の海産物を食べる機会があります。
「サメバーガー」や「カメ煮」など、小笠原以外ではほとんど耳にすることはない名物もありますよね。
私たちが海の幸を食べるまでには「漁協(漁業協同組合)」が関係しています。
今回は父島の漁協「小笠原島漁業協同組合」の組合長・髙瀬吉安さんにお話を伺ってきました!普段はあまり見ることのない漁協のお仕事にも迫ります!

小笠原島漁業協同組合事務所
お話を伺ったのは・・・

小笠原島漁業協同組合
代表理事組合長
髙瀬吉安さん
漁師と消費者を繋ぐ 漁協のお仕事
魚などの海産物は漁師さんが獲ってきますが、私たち消費者の元に届くまでにはいくつかのプロセスがあります。
スーパーに並ぶまで、飲食店で食べるまで・・・。
そこに必要不可欠なのが漁業協同組合の存在です。
普段目にすることはない漁協のお仕事について伺いました。

ありこ:本日はよろしくお願いします! まずは、漁協のお仕事を知る機会があまりないので、主にどのような業務があるか簡単に教えていただけますでしょうか。
髙瀬さん:簡単に言うと、漁船の水揚げをして計量し、各市場に出荷をするのが主なお仕事です。漁業に関する全般を担っているのですが、例えば漁船保険、漁獲共済(水揚げ量が低下した際の補填)、各市場との金銭のやり取りなどの事務作業もたくさんあります。
万が一、海難事故が起こった際には海上保安庁と協力して捜査したり人命救助にあたったりなどといったことも仕事の一つですね。そのほかには燃料の販売業などもおこなっています。
ありこ:ありがとうございます。父島での漁業活動の全てを管理されているわけですが、父島にはどれくらいの漁船数と、漁業従事者の方がいらっしゃるのですか?
髙瀬さん:常時稼働しているのは36隻で、46名の方が従事されていますね。ちなみに母島にも漁協がありますが、別組織となります。

写真提供/小笠原島漁業協同組合職員 中島竜也・所属船主
メカジキが花形!? それだけじゃない小笠原ならではの魚たち
ありこ:小笠原に来ると魚を食べる機会がとても多いと感じます。個人的にはメカジキのイメージが一番強いのですが、他にはどのような魚が獲れますか?
髙瀬さん:そうですね、やはりメカジキは特産品ですね。他には白身魚だとハマダイ(オナガダイのこと)なども小笠原の名物です。あとはメバチマグロやキハダマグロなども多いですね。秋口から春にかけてはソデイカも獲れます。アカバ(アカハタのこと)などのハタ類も多いです。
ありこ:確かにソデイカは小笠原と沖縄以外では見かけない名物ですね! アカバのラーメンとか、小笠原にいると魚が主役の料理は飲食店でよく見かけますね。あと、ウミガメは特に小笠原ならではですよね。
高瀬さん:そうですね。ウミガメ漁専門の漁師さんもいます。
ありこ:そういった水産物にはそれぞれよく獲れる時期や旬があると思うのですが教えていただけますでしょうか。
髙瀬さん:ウミガメ漁は3月末から頭数制限を設けておこなっています。ハマダイやメカジキは通年で獲れますが、脂が乗ってる時期というとやはり冬ですよね。ただ、一年を通して水温の低い水深300mあたりのところにいるハマダイは夏も比較的脂乗りがいいかもしれないという情報もあります。まだ研究中なのですが。
ありこ:そうなのですね! 島内だけでなく内地(本土のこと)にもたくさん出荷されているかと思いますが、内地ではどういうところへ出荷されていますか?
高瀬さん:豊洲市場をはじめとした出荷先が内地に10数カ所あります。メカジキに関していえば気仙沼が多いんですよ。

写真提供/小笠原島漁業協同組合職員 中島竜也・所属船主
実は気仙沼と深い繋がりが! ブランド化した小笠原のメカジキ
ありこ:気仙沼という地名が出てくるとは意外です。
髙瀬さん:実は気仙沼ってメカジキでまちおこしをしているんですよ。加工もするし生でも食べる文化がある。だからメカジキはとても重宝されていて、それゆえ値段も安定して取引されています。
ありこ:メカジキでまちおこしというのは初めて聞きました。もしかして2011年の東日本大震災も関係しているのですか?
髙瀬さん:震災よりも前から繋がりはありました。最初は少しずつでしたが、メカジキ一本一本を丁寧に扱うことが評価されたからか、どんどん価値が上がっていったんですよね。最初からメカジキをブランド化することを目指していたわけじゃないですが、丁寧に扱っていくと付加価値がついてきた。すると次第に小笠原のメカジキが現地ではブランド物として認められるようになりました。
ありこ:他の地域で評価されるというのは素晴らしいことですね。
髙瀬さん:そうですね。メカジキにおいては気仙沼が圧倒的に多いですが、他の魚は大きさや種類によって出荷先をその都度振り分けています。地域によって好まれる種類や大きさが全然違いますからね。
ありこ:そうなんですね。漁獲高によって買い手が変わるということですね。獲れたものを機械的に振り分けているわけではないということですね。
髙瀬さん:そうですよ。あとは小物に関してですが「東京都漁業協同組合連合会(漁連)」というものがあってそこで一括で買い上げて各市場に流してもらったり、ハマダイなど旅館や高級ホテルで出るような高級魚もそこを通じて買ってもらうようにして値段を保つことなどをおこなっています。

写真提供/小笠原島漁業協同組合職員 中島竜也・所属船主
実は一般の人も購入可能! 水揚げ見学もできる
ありこ:内地への出荷について教えていただきましたが、島内にはどのように出回るのでしょうか? 一般の方も買えるということを伺いました!
髙瀬さん:島内の業者さん向けには港内にホワイトボードがあって、そこに欲しい魚の種類や量を記入してもらっています。いつ何が水揚げされるかは特定できないので、そのボードに希望を書いてもらっておいて、希望のものが水揚げされたら連絡する形です。
一般の方もご購入可能ですよ! そのホワイトボードを活用してもらうのでもいいですし、事前に電話をいただければ、希望の魚が水揚げされたときにこちらから連絡します。

写真提供/小笠原島漁業協同組合職員 中島竜也・所属船主
ありこ:観光客でも大丈夫ということでしょうか?
髙瀬さん:もちろんです。ご購入いただければ漁協の事務所で梱包材も販売しておりますし、発送まで承ります。ただ基本的には一本売りとなりますので、魚を捌いた経験のない方などにはなかなか難しいのかなあとは思います。昔は内地にも魚を捌いてくれるお店って結構あったと思うのですが、最近はあまり見なくなりましたからね。一本売りでもよろしければぜひ買いに来てください。
また事前にお電話いただければ水揚げの見学も可能です。コロナ禍でしばらく中止していますが。
ありこ:漁協のインスタグラムで数百キロもの魚が水揚げされているのを見ました! 迫力満点でしょうね。コロナ禍が落ち着いたら見学してみたいです。
本日はありがとうございました!

写真提供/小笠原島漁業協同組合職員 中島竜也・所属船主
「東京都」といっても 他地域とは一線を画す小笠原の漁業
普段あまり知ることができない漁協について伺ったことにより、小笠原で食べる魚にもこれまで以上に興味が出てきました。
この記事を読んでいる人に最後に一言いただけるかと高瀬さんにお願いしたところ、「小笠原産の魚をぜひ食べにきてください」と力強くおっしゃいました。
「東京都」と一括りにされる小笠原ですが、小笠原から一番近い伊豆七島である八丈島とも700kmほど離れており水揚げされる水産物は他の地域とは異なるものが多く、小笠原ならではの特徴的なものも多いです。
やはり一番新鮮な状態で食べられるのは島内なので、みなさんもぜひ現地に足を運んで小笠原の海の幸を楽しんでくださいね!
小笠原島漁業協同組合
住所:東京都小笠原諸島小笠原村父島字奥村
TEL:04998-2-2411
FAX:04998-2-2662
営業時間:8:00 ~ 12:00/13:30 ~ 17:00
定休日:年中無休

島旅ライター
ありこ
離島にハマり、時間を見つけては南の島に足を運ぶ都内在住の会社員。沖縄諸島を中心に50以上の離島を訪れ、最近では無人島へもよく行っている。マリン系雑誌の編集ライターの経験があり、離島に行くと細かいところまでチェックするのがクセ。
写真を撮りまくる傾向がある上に地図に弱いため、島内巡りには時間を要する。他の人があまり行かないマニアックな離島やエリアに行くのが好き。離島では島民や旅人と話している時間が何よりも楽しい。
Instagramはユーザーネーム ariko_marine で検索。離島に特化したブログも運営中。こちらのURLからどうぞ。
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