「農協(農業協同組合)」と聞いて、みなさんはどのようなイメージを抱きますか?
都市圏で生活しているとあまり馴染みがないかもしれませんが、地方や離島では農協の存在感は大きく、直売所がその地域の中心的存在になっている場合もあります。
旅先で「このフルーツお土産にしたいな!」と思うことありますよね。そんな時こそ農協です。農作物は他のお土産店では取り扱われず購入できるのは農協だけ、という場合もあります。他の特産品もたくさん扱われていることが多く、実はお土産探しに農協は必見なのです!
今回は父島の⼩笠原アイランズ農業協同組合の直売所におじゃまし、おすすめの農作物などについてあれこれ聞いてきました!
「観光客こそ行くべき!」そんな直売所は見逃せないスポットですよ!

小笠原アイランズ農業協同組合父島支店(写真提供/kohei honda)
お話を伺ったのは・・・

小笠原アイランズ農業協同組合父島支店
(右)支店長 瀬古和明さん
(左) 主任 木村真澄さん
実は幅広い農協のお仕事!島を支える重要な役割を担う
一般的に「農協」と聞くと農作物の出荷や直売所での販売をしているイメージが強いですよね。しかし離島など小さな地域においてはそれだけにとどまらず、ライフライン全体に関わる業務をおこなっていることがよくあり、小笠原でも重要なポジションを担っています。
まずは小笠原における農協のお仕事について伺いました。
ありこ:農協のお仕事の全体像をざっくりと教えていただけますか?
瀬古さん:農協は「組合員」と呼ばれる所属業者さんたちと提携させていただいて成り立っています。小笠原の場合は農家さんや加工販売業者さんが多いのですが、その方々の組合さんたちの支援というのが大事な事業としてまず挙げられます。組合員さん の商品を売るための直売所の営業、それから農家さんが使う資材の販売などですね。
ありこ:直売所というのは組合員さんたちの農作物や商品を消費者に直接届けることができる大事な場所なのですね。
瀬古さん:そうですね。あとはガス事業も大きな事業です。小笠原では父島・母島合わせてガスを扱っているのは農協だけで、約1,200のご家庭のプロパンガスの供給やメンテナンス等をさせていただいています。母島だとそれに加えて、船客の待合所でははじま丸乗船券の店頭販売 や貨物の島内配送業務などもおこなっています。
ありこ:母島にも農協の直売所がありますよね。
瀬古さん:そうですね。母島から来る農作物も多いので、父島と母島では常に連携して業務をおこなっています。
父島と母島それぞれに直売所があり、そこに出荷している農家や加工販売業者の組合員さんは合計40軒ほどいらっしゃるそう。
直売所は島の生産者と私たち消費者を繋げる橋渡しの役割を担っているのですね。
島に行ったら直売所に行ってみよう!何があるかは運次第!?

2022年秋現在の臨時店舗。2023年1月末には従来店舗の改装工事が完了し、新装開店する予定
次に観光客との接点である直売所について聞いてみました。
ありこ:店頭に並ぶ商品はどのように選定されているのですか? 旬や人気などを考慮して選んでいるのでしょうか。
瀬古さん:基本的に組合員さんが持ってきた商品を断ることはなく、なんでも販売しています。その意味でいうと私たちも「何が入ってくるかはわからない」と言えますね。
ありこ:そうなのですね! とはいえ、季節によってやはり傾向はありますよね。
瀬古さん:そうですね。時期ごとに「こういうものが入ってくるだろうな」という予測はもちろんありますよ。
ありこ:特に人気の農作物はなんですか?
木村さん:これからの季節はやっぱりトマトですね。小笠原のミニトマトは冬がシーズンなんです。今年は例年より少し早くて10月末に初物が出ました。そこから5月初旬までありますが、ピークは2月~4月頃ですね。とても甘くておいしいですよ。

入荷したらすぐに売り切れてしまうほど大人気の小笠原ミニトマト
ありこ:私は秋〜冬に小笠原に来ることが多いのですが、他のリピーターさんも農協でミニトマトを見つけたら迷わず買っていますね。「今ならあるよ!」って情報交換することも多いです(笑) やはりトマトは争奪戦ですか?
瀬古さん:店頭で販売するのは数も限られるのでタイミング次第ですね。ただ贈答用として化粧箱に入った商品もあって、それは予約を受け付けることができます。
実はネット販売もおこなっているので内地(本土のこと)からもご購入いただけるんですよ。入荷次第の発送ということになります。
生産者が丁寧に栽培したミニトマトは徹底した糖度管理がなされ、もはやフルーツと称されるほど甘くて美味しいです。「小笠原ミニトマト」としてブランド化され大人気。島内の飲食店や宿泊施設へは優先的に販売しているため、観光客は意外と食べられる機会がありますが、内地で出回ることはありません。
気に入ったらぜひ直売所へ! 売っていたらマストバイな特産品です。

贈答用の小笠原ミニトマト
立派な化粧箱に入っています

贈答用の小笠原ミニトマト
ありこ:他の季節にはどんな旬のものがありますか? また、ぜひ注目してほしいものはありますか?
木村さん:代表的なのはパッションフルーツでしょうか。パッションフルーツは夏前の6月頃が旬です。他にも島バナナが有名ですが、島バナナは安定的には入ってこないんですよね。台風などで倒木すると入ってこなくなります。
ありこ:テレビで島バナナのことが取り上げられたのを見たことがあります。島バナナは普通のバナナより小さくて本当に甘いですよね! これも見かけたら手に入れるべきですね。
瀬古さん:夏はマンゴーがあればそれもおすすめです。小笠原では計画的に栽培しているものって実は多くないんです。今年は小笠原の気候がマンゴーの栽培に合っていたのか、かなり出た印象ですね。他には四角豆や島オクラも島ならではと言えますかね。
木村さん:シャシャップってご存知ですか? サワーサップやサワーソップとも呼ばれるフルーツで甘くておいしいんです。暑いところでしか育たなくて日本では珍しいかも。ただ結構大きくて、食べるのも持って帰るのも大変です。そこで直売所では食べ頃のものを小さく切って販売しています。現地でしかなかなか食べられないと思うのでおすすめです。
ありこ:初めて知りました! 直売所の冷蔵庫にカットフルーツが売っているのは知っていたのですが、実はその中にあったんですね。ちょっと小腹が空いた時に気軽に買える、しかも島ならではのものってなると「食べてみようかな」という気持ちになりますね。

日によって品揃えが異なる冷蔵庫の中も忘れずに見てみてくださいね
基本的にはおがさわら丸の入港中に品揃えが良くなるようにしているそうですが、農家さんにより入荷のタイミングは異なるそうで、前日になかったものが翌日にはあったりもするため毎日覗いてみるのも良いかもしれません。

店舗入り口にはその日取り扱いがある野菜が書かれていました
お買い物後は直売所からそのまま発送可能!帰りは身軽に♪
ありこ:直売所で購入した農作物はその場で発送ができると聞きました。どのような手続きが必要ですか?
瀬古さん:発送用の段ボールも販売しているので送りたいものと一緒にご購入いただき、レジで配送代と一緒にお支払いいただきます。送り状を書いていただいたら職員が郵便局への持ち込みを代行します。手続きが全て直売所で完結できるようになっているのでお客様が郵便局に行く必要はありません。

直売所で販売されている段ボールのサイズは大小さまざま
ありこ:商品によっては冷蔵状態がいいものもあると思うのですが・・・。また、早く買いすぎて内地に届くまでに傷んだりとかの心配は大丈夫でしょうか。
瀬古さん:チルドも大丈夫です。傷む可能性がある場合は事前にお伝えします。場合によっては断ることも。入荷が見込まれるものに関しては発送直前に入れ替えて発送をするなど柔軟に対応しています。
木村さん:例えばバナナとかって難しいんですよね。チルドにはできないけど常温では傷む可能性がある。バナナが採れる時期って暑いので。だからなるべく島内で食べちゃった方がいいですよっていうおすすめもします。
ですが、緑色の状態だったら送ることも可能です。食べ頃の黄色になるまでしばらくあるので、内地に帰ってからも「待つ」という楽しみがありますよね。
ありこ:それはいいですね!バナナは房で売られている場合が多いとのことなので、持って帰るのは重くて大変だし緑色の状態で送るっていうのはいいなと思いました。家に帰ってもしばらく小笠原の余韻を楽しめますね。

いつもあるわけではない島バナナ。持って帰るなら緑の状態のものを購入しよう!
農作物だけじゃない!お土産探しに直売所は必見
農協の直売所で販売しているものは青果だけではありません。お菓子などの加工品も充実しています。
ありこ:私は小笠原に来るとお土産を買うために農協直売所を必ず訪れます。食べ物のお土産がやっぱり一番喜ばれるかなと思うので。直売所にはお土産にしたい商品がたくさんあるのでいつも悩みますね。
瀬古さん:ありがとうございます。農協の組合員さんは農家さんだけでなく加工販売業者さんもいらっしゃるのでその方々の商品を取り扱っています。
ありこ:最近人気のものはどういったものがありますか?
瀬古さん:レモン系の商品は増えています。ここ数年、全国的にも健康ブームが後押しして国産レモンは注目されていますよね。小笠原でもその流れは感じます。あとは唐辛子系。テレビでも取り上げられたラー油系調味料は大人気ですよね。硫黄島唐辛子とかも買われていきます。ハチミツも人気です。
ありこ:レモンもハチミツも大好きなので私もチェックしています。ハチミツは父島産と母島産で色がずいぶん違いますよね。どちらも普通のハチミツに比べると高価ですが・・・
瀬古さん:たくさん作って安く売ろうっていうのは、小笠原ではなかなか難しいことです。ハチミツもそうですが、他にも通年で出せない商品は結構あります。なので出会えたらラッキーですし、そういうものを今度新しくなるイートインスペースなどで提供してみなさんにも広く知っていただきたいですね。

取材日に見かけた島ハチミツ。ビン入りの父島産・母島産ハチミツもある
新しく生まれ変わる農協直売所!さらに島の特産品をアピールできる場所へ
ありこ:現在(2022年11月)は従来店舗が改装工事中ですが、新装開店はいつ頃を予定されていますか?
瀬古さん:2023年1月末を予定しています。2月から新しい店舗でみなさまをお迎えしようと進めています。
ありこ:臨時店舗は従来店舗と同じ建物の2階で営業されていますが、改装工事後は1階での営業が再開しますので、より気軽に店舗に立ち寄れるようになりますね。完成イメージはどんな感じですか?
瀬古さん:以前より広くなるので、イートインスペースも充実させる予定です。カフェのようになることをイメージしています。主に軽食を扱う予定ですがアルコールも販売しますよ! 島の食べ物をもっと観光客の方にも知ってもらえるきっかけになるような場所になればいいなと思っています。
生産量が少なくてまだ大々的にはPRできないものなどを積極的に提供していきたいです。コーヒーなどもそうですね。イートインスペースができればさっき話したようなカットフルーツもその場で食べてもらいやすくなりますし、小笠原の特産品を気軽にお試しいただけるようになると思います。どんどん観光客のみなさんに来てほしいです。
ありこ:とても楽しみですね!
瀬古さん:コーヒーは母島でも栽培が始まり、前向きな農家さんは増えています。まだ生産量が少なくこれからというところですが、今後の主力商品としての期待も高いです。他にもいろいろと新しい動きがあるので、一丸となって良いものを作って盛り上げていきたいです。
ありこ:今後も小笠原から新しく出てくる商品に注目ですね! 本日はありがとうございました。
内地から遠く離れた小笠原では特徴的な農作物や珍しい商品もありますが、立地的事情や人手の問題などから大量生産できないものも数多くあります。ですが、それは逆に言うと現地でしか味わえないものが多いということ。
また、そのような状況を逆手に取りブランド化して価値創造していくことが、小笠原の農産業を支えていく一つの重要なファクターなのだと思いました。
トマトやコーヒーはその一例でしかなく、今後も新しいものがどんどん出てくると思うとワクワクします!
もうすぐ新しく生まれ変わる農協直売所に、ぜひみなさんも足を運んでくださいね 。
⼩笠原アイランズ農業協同組合/直売所
住所:東京都小笠原村父島字東町(番地なし)
TEL:04998-2-2940
FAX :04998-2-2939
営業時間:9:00 ~ 17:30(出港日は9:00~15:00)
定休日:おがさわら丸出港翌日

島旅ライター
ありこ
離島にハマり、時間を見つけては南の島に足を運ぶ都内在住の会社員。沖縄諸島を中心に50以上の離島を訪れ、最近では無人島へもよく行っている。マリン系雑誌の編集ライターの経験があり、離島に行くと細かいところまでチェックするのがクセ。
写真を撮りまくる傾向がある上に地図に弱いため、島内巡りには時間を要する。他の人があまり行かないマニアックな離島やエリアに行くのが好き。離島では島民や旅人と話している時間が何よりも楽しい。
Instagramはユーザーネーム ariko_marine で検索。離島に特化したブログも運営中。こちらのURLからどうぞ。
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