自然

小笠原唯一の落葉広葉樹【モモタマナ】に癒される

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小笠原で唯一の落葉広葉樹【モモタマナ】

島に移住したばかりで植物のことなど何も知らなかった頃、森歩きのツアーで
『この樹は【モモタマナ】っていう名前だよ』
と教えていただきました。

ももたまな!?

なんてかわいらしい名前!!

 

私はもう、その言葉の響きだけで大好きになってしまいました(笑)

それ以来、季節に応じて癒しを与えてくれる【モモタマナ】

今回は、この癒しの樹木をご紹介させていただきます。

モモタマナは熱帯地区の海岸林

モモタマナは小笠原の固有種というわけではなく、熱帯地方に広く分布していて、日本では沖縄にも自生しています。

 

名前の由来は
・実の外皮が桃のような形をしていること
・大きくてやわらかな葉っぱがおいしそうなので、キャベツの別名『玉菜』を引用

 

種がヤシの実のように繊維に覆われていて水に浮くことができるので、海を渡って子孫を広げることができるのです。

モモタマナは小笠原で唯一の落葉広葉樹

小笠原諸島は【亜熱帯気候】に属し、イチョウやモミジなどは自生していないので秋の紅葉はありません。

小笠原に生息する樹木で紅葉するのは、【モモタマナ】だけなのです。

モモタマナは春に紅葉!?

日本で【紅葉】と言えば、秋の風物詩ですよね。

でもこの【モモタマナ】は、春に紅葉します。

 

海がザトウクジラでにぎわい、島の桜【カンヒザクラ】が葉桜となる3月上旬~中旬頃に紅葉するのです。

朱色となった大きな葉っぱは、この時期に多い爆弾低気圧の強風を受けて一気に落葉し、卒業・入学・転勤で人の移動が多くなる3月末~4月上旬には新芽が出てきます。

落葉から芽吹きまでが半月足らず

小笠原の3月は、一気に日差しが強くなります。

海水温はまだ低く冷たい北風に吹かれることが多いのですが、日差しは『痛い』と感じるほどに強くなるのです。

そのためか、モモタマナの枝先には落葉後2週間ほどで新芽が現れます。

この新芽のカタチ、特徴的だと思いませんか?

私は『バルタン星人』と読んでいます(笑)

新芽がわらわらと出てくる頃は、モモタマナの枝先でバルタン星人たちがミーティングをしているように見えたりして、思わず笑っちゃうのです。

 

小笠原の植物は、彼らが生息している場所の日当たり具合によって開花や芽吹きの時期がちょっとずつズレています。

なので島内のモモタマナも一気に紅葉するわけではなく、あっちの樹は紅葉真最中なのにこっちの樹は落葉後の丸裸、そっちの樹では紅葉後の芽吹きが始まっている、なんてことがよくあります。

 

バルタン星人に会いたい私はこの時期、散歩中のモモタマナ枝先チェックを欠かせません(笑)

若葉は語る『上を向いて歩こう』と

新芽の成長は早く、バルタン星人は1週間も経たないうちに華やかなチューリップへと変身します。

成長した若葉たち、枯れ木に花が咲いたように見えませんか?

 

天気も海況も不安定な春先は、気持ちも不安定になりがち。

グレーに覆われた空をチラ見しながら下を向いてパソコン作業を続けていると、気持ちも下がり気味です。

 

そんな時、『ほら、こんなふうに上を向こうよ!』と語りかけてくれるモモタマナの若葉。

その出で立ちと姿勢に、元気をもらえるのです。

感謝!!

大きな樹のちいさな花

小港園地

<小港園地>

モモタマナは成長すると20mを超える高木となります。

四方に枝を伸ばし大きな葉を茂らせて広い日陰を作ってくれるので、公園に植樹されることも多いようです。

 

こんなに大きくなる樹なのに、花は小指の爪よりも小さいのです。

まるで星の妖精みたい☆彡

 

9月末~10月頃、モモタマナの樹の下に腰を下ろしていると、ハラハラと星が降ってきますよ!

モモタマナの実は食べられる!?

モモタマナの英語名は【トロピカル・アーモンド】【シー(海)アーモンド】

アーモンドですって!?

食べられるってこと!?

 

好奇心サイズ3Lの私は、試してみました(笑)

繊維質に覆われた実をがんばって叩き割ると、中からやせ細ったアーモンドのような実が出てきます。

味は・・・

油分の少ないナッツといった感じ。

少し炒ってみたら、香ばしさが加わってもうちょっと美味しくなるかもしれませんね。

 

そして、このモモタマナの実を大好きな動物がいるのです。

オガサワラオオコウモリもモモタマナが大好き♡

モモタマナの実が大好きなのは、小笠原唯一の固有哺乳類【オガサワラオオコウモリ】

 

「コウモリ」って聞いてすぐにイメージできる人は少ないかもしれませんね。

あるいは、ハロウィンのキャラクターやバットマンのイメージの方が多いのではないでしょうか(笑)

コウモリ(クレジット付)

実は、日本の市街地などでも見られます。

本州付近で見られることの多い【アブラコウモリ】は手のひらサイズの大きさで、虫や小動物を餌にしています。

 

一方、南方に生息する大型のコウモリは花の蜜や果物を餌としていて【フルーツバット】と呼ばれます。

羽を広げると80~90cmにもなる大きさでありながら、彼らが食するのは果物。

果物が熟れた頃や南方系の花が十分に蜜を抱えた頃を見極めて食する、けっこうな美食家なのです。

オオコウモリの飛来を感じる朝の散歩道

モモタマナの実

<左側が、外皮を失ったモモタマナの実>

ある日朝の散歩道で、外皮だけなくなっている実をみつけました。

ネズミだったら中の種を食べたいはずだし、どういうことかしら・・・?

そう思って沖縄のモモタマナ事情を調べてみると、『オオコウモリが食べている』という情報が。。。


そこで、小笠原の【コウモリ先生】小笠原自然文化研究所の鈴木さんに聞いてみました。

『オガサワラオオコウモリって、モモタマナの実をかじったりします?』

鈴木さん食べますよ。・・・っていうか、大好き(笑)』


わお!

モモタマナの実の外皮は、オオコウモリが食べていたのですね!!

謎が解けた~

 

一度気付いてしまったら、外皮だけがはがれたモモタマナの実が目に付くようになりました。

ささくれだった外皮がまだ湿っているものは、前夜に【オガサワラオオコウモリ】がかじっていた証拠。

 

【オガサワラオオコウモリ】は生息数が少なく、絶滅危惧種に指定されています。

ナイトツアーの目玉のひとつになっていますが、必ず見ることができるとは限りません。

 

そんな彼らが楽しそうに食事していた様子をうかがい知ることのできる朝の散歩道。

その存在を感じることができるだけでうれしくなる朝なのです

モモタマナの変化を楽しめる春

春のモモタマナは、わずか1ヶ月ほどの間に紅葉して落葉し、新芽が芽吹いて若葉となります。

めまぐるしい変化を遂げる春。

街路樹や公園でも見られる樹木なので、海岸周辺のそぞろ歩きやツアー送迎の車窓からもぜひ探してみてくださいね!

マーメイドカフェ

Mermaid Cafe オーナー

あらいたかみ

小笠原の海に魅せられて、1998年より小笠原に移住。
ダイビングインストラクターとしての仕事を引退した後、少女の頃の夢『手作りケーキとおいしいコーヒーの店』を移動販売車で始める。

Instagram:mermaid__cafe
Facebook:Mermaid Cafe(マーメイドカフェ)
Twitter:MermaidCafe2
Youtube:Mermaid Cafe

小笠原の生活を綴ったブログ『マーメイドのひとりごと』公開中
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