観光

バードウォッチャーから見た西之島

  • twitter
  • facebook
  • line
  • はてなブックマーク

先日、2022年7月3日NHK『ダーウィンが来た!』で最新の西之島の特集がありましたね。

噴火を繰り返し、変化・成長を遂げる西之島は海鳥バードウォッチングガイドの私にとっても注目の島です。

というのも、西之島は海鳥たちが繁殖している島なのです。大規模な噴火がある度に、海鳥たちが心配になります。しかし、彼らは噴火がおさまるとすぐに戻ってくるようで、たくましいなといつも感心させられます。

2017年・2018年小笠原海運㈱による、おがさわら丸で行く「西之島クルーズ」がありました。私は所属のバードウオッチング専門旅行会社でツアーを企画し、ガイドとして乗船しました。

一番のターゲットとなったのが大型の海鳥でした。

西之島クルーズで出会う!貴重な海鳥とは

カツオドリ目カツオドリ科カツオドリ属
アオツラカツオドリ(英名:Masked Booby)

名前の如く、顔が青いのが特徴です。

男前ですね!(雌雄同色なので、どっちかわかりませんが…)

聟島・父島・母島列島海域でよく出会うカツオドリ(Brown booby)よりも1回り程大きい鳥です。日本での繁殖は尖閣諸島と小笠原諸島の西之島

国内での出会いは非常に稀です。

これまでバードウォッチャーたちは、このアオツラカツオドリに出会うために、石垣島方面に向かうフェリーなどに乗るなどしてチャンスを狙うしかありませんでした。

この西之島クルーズのおかげで、もう一つの観察チャンスが生まれました!初めて行く海域と島、噴火で成長中の島とあって、鳥だけではなくすべてが未知。

ワクワクのクルーズでした。

2017年6月、西之島へ!

大雨が降っていたけれども、噴火中でモクモクと上がる噴煙と、噴火による唸る音が今でも忘れられません。

当時の貴重映像はこちら!

私が初めて西之島を訪れた年。鳥の生息情報に関しては未知の世界。

とりあえず、これまでの情報から観察できるであろう海鳥を推測していました。先ほどあげたアオツラカツオドリに会えれば…という期待と不安。

しかし、現れました!

期待を胸にいざ観察!現れたのは・・・

20170604西之島アオツラカツオドリIMG_2011

アオツラカツオドリ(Masked Booby)

20170604西之島アオツラカツオドリと西之島IMG_2458
西之島バックに飛ぶアオツラカツオドリの写真はお気に入りです。
20170604西之島アオツラカツオドリJIMG_2814

若鳥にも会えました。

繁殖シーズンとあって、たくさんの海鳥が島の周りを飛んでいました。

2017西之島クルーズ観測

私のツアー参加者も、この貴重な海鳥を夢中になって撮影しておられました。

セグロアジサシ(Sooty Tern)

オオアジサシ(Greater Crested Tern)

オオアジサシの大きな群れ。これだけの数を見ることも貴重。(白い帯状の点)

クロアジサシ(Brown Noddy)

カツオドリ(Brown Booby)

オナガミズナギドリ(Wedge-tailed Shearwater)

シロハラミズナギドリ(Bonin Petrel)

このように、島の周りをたくさんの海鳥たちが乱舞していました。

2018年10月、1年後の西之島へ

この年の西之島クルーズ10月とあって海鳥の繁殖シーズンは過ぎていたので、2017年に観察できたような種数の海鳥は観察できませんでした。

この日、火山活動は小康状態でしたが、時折、噴火していたので警戒距離を保っての航行でした。天気がよいこともあり、とても美しい西之島に感動しました。

噴火が続く島で生息する、貴重な生命

アオツラカツオドリと西之島DSC06615

無事に、この年もアオツラカツオドリに会うことができました!

しかも一部溶岩に飲み込まれていない旧島エリアにはたくさんのアオツラカツオドリがいました!(白い鳥)

こんなに多くの個体数が観察できたのは衝撃でした。

1羽見られただけでも感激する鳥なのに…

西之島クルーズは、価値ある観察を体験できる貴重なクルーズ

この2年間に実施された西之島クルーズは、私にとっても、参加した皆さまにとっても、心に強く残る日になりました。

成長中の島を見るという貴重な機会、噴火しながら活きている島姿を見る貴重な体験。
バードウォッチャーにとっても未知のこの島でロマンを求めて挑んだことも…。

いずれ噴火活動がおさまると、海鳥たちが植物の種を羽毛につけて島に降り、その種が芽吹き、緑が生まれる…そして、どんどん様々な生き物が命を育んでいくのだろうなと想像すると、NHK「ダーウィンが来た!」で調査隊(研究者)たちが見せたワクワクの笑顔と、私も同じ笑顔になってしまいます。

これ以降、コロナ禍に突入し西之島クルーズ残念ながら中止が続いてしまいました。
わたしが見た2018年の姿からは大きく島の形が変化しているようなので、また西之島と海鳥たちに会いに行けるチャンスがあれば必ず参加したいと思います。

海と島と鳥って繋がらない方も多いと思います。
でも密接なつながりがあって、海で生活する鳥もいます。海鳥です。

植物の種や虫を運び、島に新たな生態系作る海鳥たち。
海鳥にとって島は繁殖にとって大事な存在。特に無人島。

優雅に、かっこよく海を飛ぶ姿も見どころです。
ぜひ、海に出たり、クルーズに出た時は鳥にも注目してみてくださいね。

中村咲子

くじら好きから始まったバードガイド

中村 咲子

鯨類と野鳥が好きで、全国で船に乗って洋上観察しています。
2016年よりバードウォッチング専門ツアー会社「ワイバード」でバードガイド始めました。
海鳥専門でやっています。海鳥ガイドは少ないうえ、女性は初。
趣味で小笠原に通っていたこともあり、近年では小笠原ツアーにも力をいれています。

ただ…実はこんなに海が好きなのに潜りが得意じゃないのが欠点。小笠原の海で練習中…

http://seabirdwhalesakiko.livedoor.blog/