海のアクティビティ

父島在住の写真家が教える! ホエールウォッチングの楽しみ方 パート1

  • twitter
  • facebook
  • line
  • はてなブックマーク

12月も下旬になり、小笠原近海のザトウクジラの姿も増えてきました。
待ちに待ったホエールウォッチングシーズン到来です。

2019年シーズンは、11月27日に聟島列島の北ノ島の沖で最初のザトウクジラの姿が見られました。

ザトウクジラは世界中の様々な場所で、ホエールウォッチングの対象になっているクジラですが、ほかのクジラに比べても派手なアクションをして楽しましてくれるクジラです。

小笠原に来遊するザトウクジラは、夏はアリューシャン列島周辺で餌を食べて過ごし、冬から春にかけて交尾や出産、子育てのために小笠原の海へ帰ってきます。

小笠原ホエールウォッチング ブリーチング

父島の海でホエールウォッチングするボート

日本でザトウクジラをウォッチングできる場所は、沖縄や奄美大島がありますが、小笠原では一足早く12月ころから5月下旬までと、他所よりも長い期間見ることができます。

今回は、ホエールウォッチングでみられるザトウクジラの様々な行動を紹介したいと思います。

ザトウクジラのさまざま行動を紹介します

小笠原ホエールウォッチング02

ウェザーステーション展望台のクジラの行動の案内板。ここからもザトウクジラの観察ができる。

ホエールウォッチングのボートに乗ったとき、ウォッチング中に船長さんやガイドさんが、クジラの行動について解説するのですが、その時に使うクジラ用語について説明します。

ホエールウォッチングのちょっとした予習のようなものと思って読んでいただけたらと思います。

これらの用語を知っていれば、より楽しくホエールウォッチングできるでしょうし、一緒に行った友人にもちょっと自慢できるかもしれませんよ。

ブロー

ブローはクジラの呼吸の時に吐かれる息です。クジラは哺乳類なので海中に潜っていても、ときどき海面に出て息継ぎする必要があります。

クジラの潮吹きと言ったりしますが、吐き出されているのは潮ではなくて、息です。

小笠原ホエールウォッチング ブロー

吐き出された息は2~3mの高さに立ち昇る。

ザトウクジラの鼻は頭の上についているので、海面に浮上した時に鼻から息を吐きだして息継ぎをします
このときに、クジラの体の中で暖められた息が、吐きだされた瞬間冷えて霧のようになるのです。

小笠原ホエールウォッチング ブロー

ブロー 吐き出された息は2~3mの高さに立ち昇る。

クジラを探すときの最初の手掛かりになるもので、ボートを走らせていて最初に見つけるのがこのブローです。

ホエールウォッチングはまずこのブローを見つけることから始まります。

小笠原ホエールウォッチング ブロー

ボートから最初に発見するブローはこんなイメージ。

フルークアップダイブ

海面で浅い潜水と呼吸を何度か繰り返したクジラは、最後に大きく呼吸をすると背中を大きく弓なりに曲げ、海面に大きく尾びれを上げて潜ります。

これをフルークアップダイブと呼びます。スローモーションのように、きれいに尾びれを上げて潜るとウォッチングボート上では歓声が上がります。

逆に尾びれを上げずに潜ったり、ちょっと不格好に潜っていくクジラもいます。

小笠原ホエールウォッチング フルークアップ

尾びれの縁から滝のように水が流れる。

このときに見える尾びれのふちのギザギザや裏側の白黒の模様は、クジラ1頭1頭それぞれに違った形をしています。

ザトウクジラは、この尾びれの裏側の写真を撮ることで個体識別ができるのです。

小笠原ホエールウォッチング フルークアップ

尾びれの裏は、真っ白なものや真っ黒のクジラもいる。

個体識別をすることで、そのクジラがいつ小笠原に来ているとか、メスなら何年おきに子供を産んでいるのか調べることができます。

ペックスラップ

クジラが海面で体を横向きや仰向けになって、胸ビレを海面に叩きつける行動です。

 

小笠原ホエールウォッチング ペックスラップ

胸ビレを上げるときにお腹側の畝が見える。

ペックスラップは、ほかのクジラやイルカも行うこともありますが、なんといっても胸ビレが長いザトウクジラのペックスラップは見事です。

胸ビレをたたくとはいっても、攻撃的に叩きつけるのではなく、リラックスして、ぷかっと浮かんで胸ビレをひらひらさせているような感じが多いです。

小笠原ホエールウォッチング ペックスラップ

仰向けになり万歳しているように胸ビレを上げることもある。

ときには、オスのクジラたちの争いの最中に、攻撃的に叩きつけることもありますが、海面から4mもある大きな胸鰭が水しぶきを舞い上げると水滴がキラキラ輝いて美しいものです。

ホエールウォッチングで観られるクジラの行動を動画で紹介!

南俊夫

写真家・ガイド

南 俊夫

22歳の時に初めて小笠原を訪れる。大学卒業後、設計会社に勤めるが27歳で父島に移住。以来、20年のダイビングガイドをしながら小笠原の自然を撮影し続ける。2011年からはアホウドリの保全活動にも従事しする。
作品は国内外の広告、出版物で使われ、2015年にはアメリカのネイチャーズベストマガジンの表紙を飾った。
著書
「イルカ海に暮らす哺乳類」あかね書房 
「僕はアホウドリの親になる」偕成社
受賞歴
2000年
ナショナルジオグラフィックフォトコンテスト入賞
2008年
米、ネイチャーズベストマガジンフォトコンテストOcean部門入賞
2011年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト2nd Place
2015年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト11nd Place

写真展
2012年6月
「コニカミノルタ環境企画展OGASAWARA未来へつなぐ自然展」 新宿コニカミノルタギャラリー
2013年11月
「海のシェルパ展 AQUANOTE」四人展 新宿ヨドバシカメラギャラリーINSTANCE
2015年10月
「小笠原の今を知る 南俊夫写真展」葛西臨海水族園
2018年10月「アホウドリ復活への挑戦 ~小笠原で行われたこと」品川キヤノンギャラリー
作品は下記ウェブサイトで見ることができる。

http://toshiominami.com/