沈没船がダイビングで観られる小笠原の海とは
小笠原でのアクティビティの中に戦跡ツアーというものがあります。
映画「硫黄島への手紙」の舞台となった硫黄島は小笠原諸島に属し父島から南南東に約300キロにあります。太平洋戦争では1ヶ月以上の戦闘が行われ米軍が日本軍を制圧しましたが、両軍ともに死傷者は2万人を超えました。

硫黄島の摺鉢山山頂から見る南海岸。この浜に米軍が上陸し激戦が始まった。
父島は激戦地にはならなかったものの、島内には多くの戦跡を見ることができます。
山の中にはいくつもの豪があり、海に面した出口には砲台がいまだ残されています。
これらを見学する「戦跡ツアー」もあります。
そして、戦跡は美しい海の中でも見ることができます。
父島の二見湾の中や兄島の滝ノ浦湾には多くの船が沈んでいて、いまでは魚たちが集まる漁礁としてダイビングポイントにもなっています。
今回はファンダイビングで潜ることのできる沈船を紹介したいと思います。
兄島 バラ沈
兄島の滝ノ浦湾に沈んでいる貨物船でバラバラになっていることから「バラ沈」と呼ばれています。
水深は15mほどで、流れもないので初心者でも安心して潜れるダイビングポイントです。

バラバラになった沈船は魚礁となっている。
魚も多く、ヨスジフエダイやアカヒメジなどの群れや日本固有種のユウゼン、小笠原でしか見られないカラーのクマノミもいます。

ヨスジフエダイの群れいつもここに固まっているので写真も撮りやすい。

幼魚のときは黄色いが成魚になると黒くなるのは小笠原限定のカラー。
他にも目を凝らすと小さなかわいらしい生き物たちもたくさんいます。
カラフルなイバラカンザシやヒトスジギンポやタテジマヘビギンポなどもマクロのカメラでの撮影には最適です。

クリスマスツリーのようなイバラカンザシとヒトスジギンポ
そして、ときには普段は深いところでしか見られないニラミハナダイやアサヒハナゴイなんかが現れることもあります。

アサヒハナゴイ 小笠原ではほとんど見られない魚が突然出現することもある。

珍しいものではハチジョウタツ(ジャパニーズピグミーシーホース)がみつかることも。
沈船には、隠れる場所がたくさんあるため、アカイセエビやセミエビなどの甲殻類も多く見られます。

固有種のアカイセエビは大きいものは1キロを超えるものもいる。

セミエビもよく見られる。見た目は不格好だが味はイセエビより美味しいらしい。
最近見られるなかで面白いのはオオモンカエルアンコウです。
カエルアンコウというと5センチほどの小さなものを想像するのですが、ここにいるのはなんとバレーボールぐらいの大きさ。

周囲の色に擬態するカエルアンコウ。どこにいるかわかりますか?
潜る前に
「大きいですからびっくりしないでくださいね」
といって案内するのですが、沈船になじんだ色でじっと張り付いているので指さしても
「???」
そして、どれがカエルアンコウなのか理解すると
「え~~」
と声を漏らす人も多いです。

目の前を泳ぐ魚を捕らえるために、ひたすら動かずじっとしている。

これは2012年によく見られていた個体。
ガイドとしても受けがいいので紹介しがいがあるのですが、動かないからといって触ったりしないでくださいね。
ストレスかけずに見守っていつまでもいてくれると良いですね。
戦争により沈没した船は悲しい歴史を背負っています。
しかし、今では多くの生き物の住処としての新しい役割を担っているといえるではないでしょうか?
バラ沈の動画

写真家・ガイド
南 俊夫
22歳の時に初めて小笠原を訪れる。大学卒業後、設計会社に勤めるが27歳で父島に移住。以来、20年のダイビングガイドをしながら小笠原の自然を撮影し続ける。2011年からはアホウドリの保全活動にも従事しする。
作品は国内外の広告、出版物で使われ、2015年にはアメリカのネイチャーズベストマガジンの表紙を飾った。
著書
「イルカ海に暮らす哺乳類」あかね書房
「僕はアホウドリの親になる」偕成社
受賞歴
2000年
ナショナルジオグラフィックフォトコンテスト入賞
2008年
米、ネイチャーズベストマガジンフォトコンテストOcean部門入賞
2011年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト2nd Place
2015年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト11nd Place
写真展
2012年6月
「コニカミノルタ環境企画展OGASAWARA未来へつなぐ自然展」 新宿コニカミノルタギャラリー
2013年11月
「海のシェルパ展 AQUANOTE」四人展 新宿ヨドバシカメラギャラリーINSTANCE
2015年10月
「小笠原の今を知る 南俊夫写真展」葛西臨海水族園
2018年10月「アホウドリ復活への挑戦 ~小笠原で行われたこと」品川キヤノンギャラリー
作品は下記ウェブサイトで見ることができる。
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