自然

内地で感じる小笠原の自然・その2 神代植物公園編2

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小笠原の環境に適応しながら、独自に進化してきた固有植物。
環境の変化に弱く、原生林の減少や外来種の侵入によって、多くが絶滅の危機に瀕しています。

内地で小笠原の植物を鑑賞できる貴重な場所「神代植物公園」。
今回は「神代植物公園」で見られる、環境省の絶滅危惧種に指定されている固有植物をご紹介します。

イオウノボタン 

絶滅危惧Ⅱ類 (絶滅の危険が増大している種)

父島の南方約180kmにある北硫黄島。
現在は無人島となっていますが、1944年までは居住者がおり、さとうきび栽培などの農業が行われていました。
石器や土器も発掘されています。

北硫黄島

北硫黄島

イオウノボタンは北硫黄島の標高400〜700mのところに生育します。
葉はなだらかに湾曲しており、くっきりした3本の葉脈がみられ、薄紫の花をつけるそうです。

イオウノボタン

神代植物園で撮影したイオウノボタン

現在、北硫黄島に一般の方が上陸することはできません。
北硫黄島の、しかも絶滅に瀕している植物を見られる機会は貴重ですよ!

イオウノボタン

北硫黄島で撮影されたイオウノボタン

■写真提供:マルベリー この花を掲載したブログはこちら

ムニンノボタン

絶滅危惧IA類 (ごく近い将来における、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)

父島だけに生育する固有種です。
絶滅に瀕していましたが、貴重な個体から保護増殖事業が行われ、自生地への植え戻しも行われています。

ムニンノボタン

神代植物園で撮影したムニンノボタン

現在は高さ1mほどの常緑小低木です。
イオウノボタンと比べると、つややかで小さめの葉が特長で、4〜5弁の白い花を咲かせるそうです。イオウノボタンは近縁種です。

ムニンノボタン

父島で撮影されたムニンノボタン

■写真提供:マルベリー この花を掲載したブログはこちら

チチジマイチゴ 

ごく近い将来における、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの

島では長谷と桑の木山周辺にのみ自生する、高さ1〜2mの常緑小低木です。

キイチゴa
キイチゴb

葉は1枚が10cmほどの大きさで、葉は5つに分かれています。
蕾がほころび、下向きに可憐な白い花弁をのぞかせていました。
島では6〜7月に赤い実をつけるそうです。

チチジマイチゴ

父島で撮影されたチチジマイチゴ

■写真提供:マルベリー この花を掲載したブログはこちら

タイヨウフウトウカズラ

 (ごく近い将来における、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)
フウトウカズラa

母島のみに生育するコショウ科の植物です。
石門付近に、人口増殖した苗を植え戻した個体が生育しており、自生個体は一株のみと貴重。
高さは1〜2mで、太く立派な茎と光沢のある大きな葉を持ちます。
茎を割るようにして、先端が湾曲したユニークな形状の花をつけていました(2018年3月)。

母島で撮影されたタイヨウフウトウカズラ 提供:小笠原村観光局

ハザクラキブシ

絶滅危惧IB類 (IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)
ハザクラキブシ

母島の林内に生育しています。葉の縁は細鋸歯に囲まれています。
垂れ下がるような花序には多数の蕾が見られ、開くと淡黄色の小さな花をつけるそうです。

ハザクラキブシ

母島で撮影されたハザクラキブシ 提供:小笠原村観光局

オオハマギキョウ

絶滅危惧Ⅱ類 (絶滅の危険が増大している種)
オオハマギキョウ

神代植物園で撮影したオオハマギキョウ

高さ2mほどの常緑多年草で、母島列島にはやや多く残っています。
細長い光沢のある葉を数多くつけることから「千枚葉」とも呼ばれています。
茎には古い葉が落ちた後の跡が模様のように残されています。

オオハマギキョウ

母島列島で撮影されたオオハマギキョウ 提供:小笠原村観光局

絶滅危惧種を含む、小笠原の貴重な植物が大集結する「神代植物公園」、いかがでしたでしょうか。

故郷から離れた地にありながら、健やかに生育する姿を、ぜひ見に行って見てください。

都立 神代植物公園

都立 神代植物公園

https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index045.html

 

開園時間
午前9時30分~午後5時(入園は午後4時まで)

 

休園日
毎週月曜日(月曜日が祝日にあたる場合は、その翌日)
年末年始(12月29~翌年1月1日)

 

入園料
一般・大人 500円(団体:400円)
65歳以上 250円(団体:200円)
中学生 200円(160円) ※都内在住・在学の中学生は無料
小学生以下無料

のなかあき子

元島民ライター

のなかあき子

2015年〜2017年春まで父島居住。
2児の母。島生活で太鼓とパッションフルーツに目覚める。
父島のおすすめスポットは「製氷海岸」「コペペ海岸」「三日月山展望台への脇道」。
著書に『東京のDEEPスポットに行ってみた』(彩図社)など。

https://twitter.com/akikononaka