自然

アオウミガメを観に行こう!小笠原は日本最大の繁殖地なんです。

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小笠原で人気のある生き物は?

小笠原で見られる生き物の中で、人気があるのは何と言っても、イルカやクジラですが、ウミガメも人気のある生き物です。

日本で良く見られるウミガメはアカウミガメとアオウミガメとタイマイでしょうか。

小笠原で見られるウミガメは、ほとんどがアオウミガメで、ときどきタイマイが、そして稀にアカウミガメが見られます。(20年のダイビングガイドの中でアカウミガメに遭遇したのは5回位だと思います。)

カメラを覗き込む若いアオウミガメ

カメラを覗き込む若いアオウミガメ

小笠原は日本最大のアオウミガメの繁殖地

アオウミガメが小笠原にやってくる目的は交尾と産卵です。沖縄などにも来遊しますが、小笠原は日本最大のアオウミガメの繁殖地となっています。

小笠原には産卵時期にやってくるアオウミガメですが、その他の時期には、餌となる海藻が多い本州付近ですごすようです。

伊豆諸島の八丈島でもダイビングをしていると大きなアオウミガメが、よく見られるようです。

小笠原にアオウミガメがやって来るのは春、この時期はザトウクジラのシーズンでもありますが、ホエールウォッチングでクジラを探してボートを走らせていると、よく交尾をしているカメのカップルを見かけます。

交尾するアオウミガメのカップル1
交尾するアオウミガメカップル2

交尾するアオウミガメのカップル、オスは爪のついた前脚でしっかりとメスをつかむ

海面に大きな黒い塊が浮いてるな?と思うとたいていは交尾カメ、100キロにもなる大人のカメが2頭重なって浮かんでいる様子は大迫力です。

5月から8月は産卵の時期!

そして、5月から8月が産卵の時期になります。

今(執筆時は7月末)はまさに、産卵シーズン真っ盛り! 島のあちこちの砂浜で産卵が行われます。海岸にはアオウミガメの上陸したキャタピラの跡のような足跡がたくさん見られます。

夜、メスのアオウミガメは砂浜に上陸すると産卵に適した場所を探し、穴を掘ります。
最初は自分の体が隠れるくらいの大きな穴を前のヒレで掘ります。

その後に、卵を生むための小さな穴を後ろのヒレで、砂をすくうように器用に掘り、100個くらいの卵を生みます。

卵の大きさはピンポン玉ほど。卵を産み終えたあとは砂で穴を埋めて海へと帰ります。メスのアオウミガメは一夏に4~5回ほど上陸して卵を産みます。

 

夜が明けるころに産卵するメスのアオウミガメ

夜が明けるころに産卵するメスのアオウミガメ

そして、卵が生まれてから45日~75日すると赤ちゃんカメが生まれます。

生まれた赤ちゃんカメたちは砂からでてくると、一斉に海へ向かい旅立ちます。

砂から這い出して海を目指す赤ちゃんカメ

砂から這い出して海を目指す赤ちゃんカメ

ウミガメを驚かさないように注意しましょう。

産卵を見るのは遠くの砂浜に行かなくても、宿や飲食店が集中する町のすぐ前の、「前浜」で見ることができます。

扇浦地区に宿泊する方は扇浦海岸で見ることができるでしょう。

近場で気軽に見に行けてしまうのですが、産卵を見る際は、ウミガメを驚かさないように注意しましょう。

前浜なら海洋センターのスタッフが調査していますので、調査員の指示に従ってください。
ウミガメは砂浜に上陸しても、卵を生む前に人影などを見て驚くと、海に帰ってしまいます。それで海の中に卵を産み落としてしまうこともあるのです。

上陸するウミガメを見つけても、産卵を始めるまでは、月明かりのもとで離れた場所からそっと見守りましょう。

アオウミガメを見るオススメの時間帯は?

私がおすすめなのは夜明けに見に行くことです。

この時間に産卵の瞬間を見ることは難しいですが、卵を産み終えて砂をかけているアオウミガメの姿を見ることができます。

産卵を終え、砂をかけて穴を埋めるアオウミガメ

産卵を終え、砂をかけて穴を埋めるアオウミガメ

夜明けの美しい光の中、海へと帰るアオウミガメ

夜明けの美しい光の中、海へと帰るアオウミガメ

夜明け前の薄暗い砂浜が、少しづつ明るくなってゆくのはとても美しい時間です。

真っ暗な夜間と違って、観察もしやすいし、写真もきれいに撮れると思います。
卵を産み落とすところは見られないかもしれませんが、なによりも産卵の邪魔をする心配がありません。

大きいと100キロにもなるアオウミガメを身近に見られるだけでも素晴らしい体験ではないでしょうか。

この時期に小笠原に来たら、早起きして美しい朝焼けと海へ帰るアオウミガメを見に行ったらいかがでしょうか!

(下記の動画は2019年7月30日に撮影したものです)

南俊夫

写真家・ガイド

南 俊夫

22歳の時に初めて小笠原を訪れる。大学卒業後、設計会社に勤めるが27歳で父島に移住。以来、20年のダイビングガイドをしながら小笠原の自然を撮影し続ける。2011年からはアホウドリの保全活動にも従事しする。
作品は国内外の広告、出版物で使われ、2015年にはアメリカのネイチャーズベストマガジンの表紙を飾った。
著書
「イルカ海に暮らす哺乳類」あかね書房 
「僕はアホウドリの親になる」偕成社
受賞歴
2000年
ナショナルジオグラフィックフォトコンテスト入賞
2008年
米、ネイチャーズベストマガジンフォトコンテストOcean部門入賞
2011年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト2nd Place
2015年
米、ネイチャーズベストマガジン・Ocean Vewsフォトコンテスト11nd Place

写真展
2012年6月
「コニカミノルタ環境企画展OGASAWARA未来へつなぐ自然展」 新宿コニカミノルタギャラリー
2013年11月
「海のシェルパ展 AQUANOTE」四人展 新宿ヨドバシカメラギャラリーINSTANCE
2015年10月
「小笠原の今を知る 南俊夫写真展」葛西臨海水族園
2018年10月「アホウドリ復活への挑戦 ~小笠原で行われたこと」品川キヤノンギャラリー
作品は下記ウェブサイトで見ることができる。

http://toshiominami.com/