自然

小笠原ビジターセンター特別展「オガサワラカワラヒワ展」

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現在、小笠原ビジターセンターでは、2つの特別展を開催中です。

ひとつは前回の記事でもご紹介させていただいた「小笠原の歴史写真展」

そしてもうひとつは、今回ご紹介する「オガサワラカワラヒワ展」です。

01_オガヒワ展ポスター

小笠原ビジターセンターにて、特別展「オガサワラカワラヒワ展」を開催しています!

昨年(公財)山階鳥類研究所によって、オガサワラカワラヒワは「小笠原にしかいない鳥で、日本の固有種が一種増えます」と発表されました。

しかし、現在では絶滅が心配されるほど生息数が少なくなっています。

そうはいってもまだ私たちにとって、あかぽっぽ(アカガシラカラスバト)よりなじみの薄いオガサワラカワラヒワ。

何を食べているの?
どんな鳴き声なの?
なぜ数が減ってしまったの?

ぜひ、特別展「オガサワラカワラヒワ展」に足をお運びください。
きっと疑問が解消されるはずです。

展示は8つのパートで構成されています

  1. オガサワラカワラヒワの生態・生息域
  2. オガサワラカワラヒワとカワラヒワ
  3. オガサワラカワラヒワとあかぽっぽ
  4. 同じ仲間でもさまざまな嘴
  5. 食べちゃうぞ、食べられちゃうぞ
  6. 絶滅ってなんだ?
  7. キリリ コロロ ビィーンがもっと聞こえるようになるまで
  8. 自分の周りの自然を観察してみよう

本記事では、その一部をご紹介します。

02_全体展示写真

「オガサワラカワラヒワ展」展示風景

昔はワラワラ今はヒヤヒヤ・・・

最初に発見されたのは1828年とされています。

かつて、オガサワラカワラヒワは聟島列島、父島列島、母島列島、火山列島に広く分布していました。

戦前の古い文献には、父島では秋になると数百羽の群れが聟島列島から渡ってくるというようなことが書かれています。

ところがその後、聟島列島、父島列島、北硫黄島と硫黄島で次々に絶滅していきます。

現在では、母島列島で成鳥が200羽くらい、南硫黄島で成鳥が100羽くらいと考えられています。

母島列島では、季節によって島の間を移動しながら過ごしています。

春(4~6月)の繁殖期は、母島の属島の乾性低木林で繁殖します。

になると、群れで母島の南部にやってきて、集落や草地など開けたところで観察されるようになります。

秋・冬は母島列島全体で観察数が減り、冬はどこで過ごしているのかまだ明らかになっていません。

世界中で小笠原諸島にしかいない

昨年、オガサワラカワラヒワは、小笠原諸島にしかいない「独立種」の鳥だということが分かりました。

オガサワラカワラヒワとほかのカワラヒワの遺伝子について研究したところ、ほかのカワラヒワと別の種になったのは約106万年も前の氷河期、更新世中頃ということが分かりました。

また、形態についても本州で見られるカワラヒワと比べると、体が小さく、嘴が大きいのが特徴です。

恒温動物には、近縁種において、体温調節のため寒いところでは体が大きく、暖かいところでは体が小さくなるという法則があります。

よって、南に位置する小笠原で繁殖するため体が小さく、樹木の種子も食べるために嘴が大きく進化したと考えられています。

一方、本州のカワラヒワは北の方で繁殖するものほど体は大きく、嘴は小さくなっています。

長い年月をかけて、それぞれの環境に適応してきた結果、別々の種になりました。

03_展示写真

オガサワラカワラヒワのはく製(展示風景)

なぜ今はヒヤヒヤ・・・?

オガサワラカワラヒワは樹上に巣を作るため、木登りの得意なクマネズミが侵入するとあっという間に数を減らしてしまいました。

クマネズミは母島属島と南硫黄島だけには侵入したことがありません。

他にも、人間の持ち込んだ外来種である、ノヤギ・ノネコ・ドブネズミによって繁殖場所を失ったり、捕食されたりしてどんどん生息数が減っていったのです。

全体の数が減ると、病気や自然災害、遺伝的な多様性が減ることなどで絶滅の可能性が高まります。

絶滅してしまった小笠原の鳥たち

残念ながら既に絶滅してしまった小笠原の固有種の鳥もいます。

1889年媒島での採取記録が最後となった、アカガシラカラスバトよりひとまわり大きいオガサワラカラスバト

1828年父島での採取記録が最後となったオガサワラマシコ

同じく1828年の採取記録が最後となったオガサワラガビチョウの3種です。

彼らも、現在のオガサワラカワラヒワと同じようにネズミやノネコに捕食され、ノヤギや人間によって生息地を奪われたことで絶滅したと考えられています。

また、展示では1828年にロシアの鳥類学者が描いた銅版画色彩イメージを加えたものを紹介しています。

そこには、人間が定住する前のうっそうとした原生林の中を、2羽のカラスバトが歩く様子が描かれています。

何らかの形で奇跡的にこの島にたどり着き、環境に適応して進化していった生き物たちが、長い時間をかけて小笠原独自の生態系を作ってきたことがうかがえます。

04_展示写真

人間定住前の小笠原

絶滅させないために

オガサワラカワラヒワを守り、数を増やしていくためには、生息域内と生息域外の同時進行で対策を進めていかなければなりません。

生息域内ではネズミ・ノネコ対策はもちろんのこと、まだ解明しきれていないオガサワラカワラヒワの生態をもっと情報収集し、生息地では安全な場所を作ることが大切です。

生息域外では、オガサワラカワラヒワを飼育して個体数を増やしていくことを目指しています。

また、社会的認知度を上げていくことも重要です。

知ることで興味が湧き、その結果、オガサワラカワラヒワのことを大事に思ってくれる人が増えたら嬉しい限りです。

この特別展を通して、オガサワラカワラヒワについて学び、大切な命を守るために多くの方に興味をもっていただけたら幸いです。

05_展示写真

特大の巣に入ってオガヒワ気分になってみよう(展示風景)

06_展示写真

嘴は人間の使う道具と似ている(展示風景)

特別展「オガサワラカワラヒワ展」は、11月上旬まで開催予定

「オガサワラカワラヒワ展」では、中に入って体験できるオガサワラカワラヒワの巣の模型や、鳥の嘴と用途の似ている道具(ペンチなど)、実際に触れることのできる展示もあります(消毒等の対策をしているので安心して体験してください)。

また、鳥類学者の川上和人先生に伺ったお話も展示してあります。

この機会に見て・触れて・聞いて、オガサワラカワラヒワに詳しくなりましょう!

小笠原ビジターセンター

開館日
おがさわら丸・観光船入港中
午前8時30分~午後5時00分まで
*夜間開館日あり
*開館日については下記サイトからご確認ください。
*新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、臨時に休館することがあります。

問合せ
小笠原ビジターセンター電話番号:04998-2-3001
https://www.tokyo-park.or.jp/nature/ogasawara/

VCオカヤドカリマーク

小笠原の情報発信基地

小笠原ビジターセンター・大神山公園

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小笠原の情報収集は、小笠原ビジターセンターへお越しください!

https://www.tokyo-park.or.jp/nature/ogasawara/