文化・歴史

小笠原ビジターセンター特別展「絶海の自然 硫黄列島をゆく展」開催中!

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01_特別展「絶海の自然」ポスター

小笠原ビジターセンターにて、特別展「絶海の自然 硫黄列島展」を開催しています!

東京都心から南に約1,200キロメートル、小笠原諸島の南部に連なる硫黄列島(火山列島)は、個性的な3つの島からなります。

北硫黄島南硫黄島は小笠原諸島で最も標高の高い山岳島ですが、中央に位置する硫黄島は小笠原諸島最大の面積を誇る平坦な島です。

硫黄列島の自然環境は遠隔地であることなど調査研究を阻むハードルがいくつも存在するため、長い間謎に包まれていました。

21世紀に入ってから、本格的な学術調査が実施され少しずつ明らかになってきました。

この特別展では、最近の調査から得られた知見をふんだんに盛り込み、現在解っている硫黄列島の自然の姿をご覧いただける内容になっています。

また、専門家によって組織された学術調査隊の成果だけでなく、調査隊を縁の下で支えた裏方の活躍もご紹介しています。

なお、この特別展は2021年7月から10月にかけて、神奈川県立生命の星・地球博物館において開催された「絶海の自然 硫黄列島をゆく」にて展示されていた内容を元に再編成・展示しています。

02_展示風景

展示風景

展示は次の5つのパートに分かれています

(1)北硫黄島
(2)硫黄島
(3)南硫黄島
(4)硫黄3島を比較する・その他
(5)探検隊を支える

今回はその一部をみなさんにご紹介します。

北硫黄島

北硫黄島は、硫黄列島の中では2番目の大きさ(5.56㎢)で、最高峰は、榊ヶ峰(標高792m)です。この山頂付近の標高700mあたりに平坦面があるのが他の2島にはない特徴です。

現在は無人島ですが、1899年から1944年にかけて人が居住していました。

人間の入植とともにネズミ類が持ち込まれたため、生態系にも変化があったと考えられます。北硫黄島と南硫黄島は、共通した植物種が多い一方で、一部の植生や景観的特徴に大きな違いが見られます。

北硫黄島の山頂部はシダ植物が非常に豊富です。

南硫黄島ではたくさんの海鳥が営巣のために頻繁に土を掘り起こしていますが、北硫黄島ではネズミ類が多くの海鳥を食べてしまったと考えられています。海鳥による土壌攪乱がなくなったことで林床が安定し、シダの楽園が生み出されています。

また、北硫黄島はオカヤドカリ類の楽園で南硫黄島を凌ぐ豊かさを誇っています。

小笠原諸島で記録のある2属7種全てのオカヤドカリが発見されています。

豊富な宿貝と海岸林が繁栄の支えとなっています。大型で頑丈なマルサザエが多産し、北硫黄島の東岸にはまとまった海岸林があり、オカヤドカリが暮らしやすい島となっています。

03_北硫黄島 展示風景

展示風景

硫黄島

硫黄島は、硫黄列島だけでなく、小笠原諸島の中で最も大きい島(27.73㎢)です。

南東部先端に最高峰の摺鉢山(161m)がありますが、その他はなだらかな台地状の地形となっており、この島の環境は南北硫黄島とは全く異なっています。また戦前の開拓や戦争の影響を大きく受け、島の本来の自然はほぼ失われ、現在の植生のほとんどは外来植物で占められています。

現在、硫黄列島の中では唯一の有人島ではありますが自衛隊の基地が置かれており、民間人は立ち入ることはできません

硫黄島には南北硫黄島に比べ多くの外来種が野生化しています。例えば、人間がペットとして持ち込んだネコなどがあげられます。このことは単に硫黄島だけの問題にはとどまりません。

小笠原諸島の島間を頻繁に移動するアカガシラカラスバトをノネコが捕食する可能性や、移動性の強い鳥類が外来植物の種子を原生の自然が保たれている南硫黄島へ運んでしまう可能性もあります。

硫黄列島全体の自然を守るためには、硫黄島の生態系を適切に管理する必要があります。

04_硫黄島 展示風景

展示風景

南硫黄島

南硫黄島は、硫黄列島の中で一番小さい島(3.54㎢)ですが、最高峰は硫黄列島だけでなく小笠原諸島でも最も高く標高916mです。

南硫黄島は一度も人間が住んだことがなく、原生の生態系が残されています。
河川や池などの淡水系を持たず、平らな場所が一切なく円錐形に近い形の島です。

南硫黄島の大きな特徴は島全体が海鳥の繁殖地となっていることです。
海鳥のヒナの餌となる魚や、ヒナや成鳥の死骸が陸生甲殻類(カクレイワガニなど)の餌になることや、非常に小さい陸産貝類は鳥に付着して運ばれてくることなど、海鳥が南硫黄島の生態系の方向性を決めていると言っても過言ではありません。

かつては小笠原諸島の他の島でも同じように多くの海鳥が繁殖していたと考えられていますが、主に外来のネコやネズミによる捕食などが原因で絶滅しています。

今現在、原生の自然が保たれている島はおそらく南硫黄島だけです。
南硫黄島の生態系を守るためには、調査研究やモニタリングの継続など生態系管理が求められています。

05_南硫黄島 展示風景

展示風景

特別展「絶海の自然 硫黄列島をゆく展」は来年の春までの開催予定です!

今回の展示では、本記事ではご紹介できなかった硫黄列島を調査した探検隊の活動内容や、普段見ることのできない硫黄列島の生物の標本などを実際にご覧いただくことができる大変興味深い内容になっています。

小笠原ビジターセンターで開催中の特別展「絶海の自然 硫黄列島をゆく展」は、来年の春までの開催を予定しています。

ビジターセンターでは下記の特別展も同時開催中!

みなさんのご来館を小笠原ビジターセンターでお待ちしております。

小笠原ビジターセンター

開館日
おがさわら丸・観光船入港中
午前8時30分~午後5時00分まで
*夜間開館日あり
*開館日については下記サイトからご確認ください。
https://www.tokyo-park.or.jp/nature/ogasawara/
*新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、臨時に休館することがあります。

問合せ
小笠原ビジターセンター
電話番号:04998-2-3001

VCオカヤドカリマーク

小笠原の情報発信基地

小笠原ビジターセンター・大神山公園

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小笠原の情報収集は、小笠原ビジターセンターへお越しください!

https://www.tokyo-park.or.jp/nature/ogasawara/